偶然と想像のレビュー・感想・評価
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あ〜これはちょうどいいかも。濱口竜介理解促進映画。
「寝ても覚めても」「ドライブ・マイ・カー」に続く濱口作品三作目。
正直に言いますと、「濱口監督、ハマれそうな予感もするにはするんだけど、まだ理解が凸凹してるんよ〜、何回も見て理解しようにも3時間かけてドラマイもう一回見るの?それもしんどいんだよね〜」ってのが今の私。そして、そんな私にピッタリの映画でした。
濱口監督のいわゆる棒読み演技、音、余白感は三つともしっかり再現されている。最初の異様に長いタクシーの会話とか、ドキュメンタリー的なカメラの押し引きなどの「違和感」も然り。その一方で、各章20-40分程度で終わる構成になっており、プロットがサクサク進む。時短濱口。これが助かる。この監督の作品でテンポ感を感じることは一生ないと思っていましたが…笑
短編だからか、要所要所に遊びや笑い、コントチックなアプローチも取り入れられており、映画館にクスクス笑いが漏れるシーンもあって飽きなかったです。観ているうちに、監督の定型的な表現や、目線の置き方もだんだんと慣れてきて、格段に理解が進みました。
濱口竜介作品に触れる最初がこれだとちょっと違うと思います。ただ、大長編濱口竜介から入って、違和感の塊を全身で受け止めてから、一つ一つを組みほぐして読み解いていく作業に最適な映画と言えるかと思います。よーし、おじちゃんこれからドライブ・マイ・カーもう一回観ちゃうぞ〜。
遅れてきた濱口ファンの感想
♩出会いはいつでも偶然の風の中
きらめく君 僕の前にゆるやかに 立ち止まる
懐かし風景に再び めぐり逢えた
そんな気がする 君の胸に はるかな故郷の風
はい。ようこそ、ようこそ 私の馬鹿レビューに。いきなり、さだまさしの「天までとどけ」でございます。なんかこの映画に合っている気がします。
さてこの映画ですがタイトルが「偶然と想像」なんか難しそうですね。普通ならスルーです。普通なら。
当初は単館で小規模公開だったらしいのですが今は普通にシネコンにかかっています。
恐らく、いや絶対にあの映画の影響です。
ドライブ・マイ・カー
アメリカの本家本元のアカデミー賞の作品賞にノミネートされました。枠が広がったのも有りますが、前代未聞の快挙。
私も遅いのは承知で観たんですね。面白かった。良かった。感動した。
それでまず重要なモチーフの「ワーニャ伯父さん」を探す所がスタートですよ。ただね・・・近隣の書店で見つからず、図書館は貸し出し中。地下鉄で神保町まで行って購入。そして原作の村上春樹の短編集「女のいない男たち」を購入。
そして考えた。たくさん考えた。パンフも熟読した。
ある方から指摘されました。私は言いたい事がありすぎると・・・大正解。私のレビューは基本長文なんですが書く時に心掛けているんですよ。短く・・・そして短く。それでも長くなってしまいます。
「ドライブ・マイ・カー」のレビューも割と長いんですが、その後鬼のような追記。字数制限に掛かりました。しかしながらコメント欄で追記。多分ですがまだ続きます・・・
言っておきますが、皆さん読まないでいいですよ。まず長い。延々長蛇。しかも妄想。でもね・・・
こんな長文を書かせる作品の力って凄い。
さて以上の様な経過で私は濱口監督の大ファンになりました。にわかですけど・・・
さてある理由でマクラのおふざけは全カットしました。
オムニバス映画です。この映画は。世にも奇妙な物語と言う人もいます。コント集と言う人もいます。最近は少ないですね。好きなんですよ。オムニバス映画。
洋画だと、ロメロ監督の「クリープ・ショー」
邦画だと。和田誠監督の「怖がる人々」
3話からなるオムニバスまずは第1話
第1話 魔法(より もっと不確か)
タクシーの中で、会話する女子二人。芽衣子(古川琴音)と つぐみ(玄理)
つぐみは新しい男性の出会いがありました。喜色満面で芽衣子に一部始終を語ります。芽衣子は聞き上手です。相当に地頭が優秀。
相槌、間の取り方、ツッコミ、パーフェクト。観ていて飽きません。心理学で言うミラーリングを知ってそうです。
やがてつぐみは先にタクシーを降ります。芽衣子の自宅に近づきます。うかない顔の芽衣子。
運転手さん、今きた道を戻って下さい。
まじっすか! この先は言えません。
いやはっきりした、古川琴音って天才!
第2話 扉は開けたままで
奈緒(森郁月 もりかつき)は主婦で子供もいます。思い立って大学に入ります。欠点は性欲が強い事と理性に欠ける事。またはその両方です。
若い燕の佐々木(甲斐翔馬)の口車に乗り大学教授の瀬川(渋川清彦).にハニートラップまたは美人局を仕掛けるお話です。ところがなんと・・・瀬川は警戒心が強く・・ 思わぬ方向に話は転がり・・・不思議なエンディングに・・・
奈緒と瀬川の会話劇なんです。セクシーな単語が飛び交います。が、隠微じゃない。濱口監督の例の棒読みですね。でも棒読みだが棒読みじゃないんですね。テキストが頭の中に充満するんですよ。これがまた。
第3話 もう一度
夏子(占部房子)は東京在住ですが、クラス会の為に仙台に行きます。18年ぶりです。
あれ?あれあれ?馴染めない。当時も浮いていたし、しょうがないか・・・
ところがなんと?仙台駅のエスカレーターで見知った顔。あーー久しぶりーー
エスカレーターってドラマチック。柔道家の古賀稔彦さんの話しです。
ある日エスカレーターに乗っていた時、なんか舞台に向かう気持ちになりました。そして当時、はやっていた歌を歌うんです。「千の風になって」
♩ わたしの〜 お墓の前で 泣かないで下さい〜
下りのエスカレーターからある人物。さっしがつきましたね。秋川雅史さんです。
すれ違う二人。秋川さんは二度見、三度見。まっそりゃそうだ。古賀さんは柔道界のレジェンド。なんで俺の歌を歌ってるんだ?
偶然と想像ですよ。
閑話休題(なにわともあれ) 妙齢の女性の会話劇になります。このテキストどんだけあんだ?
そして面白くもあり、せつなくもあり、希望に満ちたエンディングに・・・
音響効果は少ないです。シューマンのピアノ曲のみです。楽しい、面白い、・・・少し違う。
記憶に残る映画です。
今更ながら濱口監督の大ファンですよ。合わない人の気持ちもわかりますが・・・
舞い上がれ 二人の明日 風船の憧れのように
二人の愛 天までとどけ
アメリカの映画賞ですが、天までとどけ‼️
こんな長文にお付き合い頂き有難うございました。
ちょうどいい時間配分で飽きないつくり
2022年3月5日
友人に誘われ鑑賞。
まったく予備知識なく観ましたがとても楽しめました。
■映画全体の感想
邦画の短編集はおそらく初めて観ましたが、間伸びしないちょうどいい作りで、ピアノの演奏を聴いているような心地よい時間でした。
監督は『ドライブマイカー』で話題の濱口竜介氏でした。
この作品にもユマニテの女優(古川琴音)が出演しており、濱口監督はユマニテが好きなんだなぁと勝手に思いました。
ドライブマイカーでも思いましたが、第一話を除いて、全体的に本を朗読しているような台詞回しだなと感じました。あえてなのだと思いますが、その真意は分かりかねました。
この映画は3話の短編で構成されています。各話ごとに刺さるセリフや描写があり、自分に置き換えて考えさせられる映画でした。
個人的にはここ最近で1番いい映画でした。
■刺さったセリフや描写
□第一話
「つーだのかーだの、さみーんだよおまえら」
あの可愛い顔した古川琴音からトゲしか感じないツッコミのセリフがツボに入り、映画館でクスクス笑いました。
また、中島歩と玄里の甘々しい会話をこれでもかとイジる描写も好きでした。
□第二話
森那月がとにかくエロい。こんな妻欲しいと思いました。
最後のキスは2回目のハニートラップの始まりなんでしょうね。
□第三話
おばさんの馴れ合いが続くので正直面白くないなと思っていました。
しかし、自分も歳を重ねるとこういう会話をして、昔のことばかり気にするのかなぁと思うと他人事には思えず、観ていて苦しくなりました。(本来そういう趣旨の物語ではないと思いますが、、、笑)
◾️偶然と想像
各話とも『偶然』と『想像』がキーワードになった物語でした。
□第一話
『偶然』主人公の親友の想い人の男が自分の捨てた元彼だと知る。
主人公は親友との仲を壊さぬよう、壊したい衝動は『想像』に留めて、大人な対応をします。夕焼けに染まる都心の工事風景は、彼女のノスタルジックな気持ちを魅せているのでしょうか?
□第二話
主人公がハニートラップを仕掛けようとした教授と意気投合し仲良くなったにも関わらず、朗読した猥雑な音声を『偶然』にも、ローマ字の打ち間違いで人生もろともぶち壊しになりました。
5年後、ハニートラップの仕掛け人だったセフレと再会し、キスをして別れるところからも、今後主人公が婚約した元セフレにハニートラップを仕掛けることが『想像』できます。
□第三話
高校時代のレズビアンの彼女に再会したつもりが、『偶然』その女性が赤の他人だったことが判明。最後にはお互いの心のモヤモヤを解消し、仲良くなります。お互いを会いたい高校時代の友人に置き換えて『想像』して会話を進めていく場面は斬新というか、変な感じです笑
会話劇
正直、まだわたしにはこの監督の手腕というか
思考の領域というか...を理解できる程ではないのですが
ドライブマイカーのときに感じた、洗練された空気感や雰囲気、
登場人物たちの会話の心地良さみたいなものは割と好きなので
この作品はドライブマイカー以上に普通に愉しめました。
急に実力ある役者さんたちが棒読みちっくになる口調には一体なんの意図が...???となりましたが
その後、宇多丸さんの解説をきき少しは納得...
とはいえ、やっぱり監督の領域にはほど遠い。
まあ良いんですそれで。
単純に作品の心地良さが好きなので^^
特に3作目で他人同士の心が通い合った瞬間の微笑ましさは本当に良くて、
初夏?昼下がり?風が気持ち良さそう、
そんな季節を感じる風景も本当に心地良く、
清々しい気分で映画館を出れる素敵な作品でした。
短編が3本続くという形式で、各々の物語的なつながりはないけれど、何...
短編が3本続くという形式で、各々の物語的なつながりはないけれど、何かを演じ、長尺での回しを多めにしてリアリティを演出しながら、「わからない」の実像に迫っていく。
気持ち悪い映画
毎週のように良質な新作映画が上映されまくりで、嬉しい昨今、今週は珍しく観たい新作が無く、それでも何か観たいと思って探したら、偶然出てきたのが、この映画。昨年の公開時に観に行って、余り引き込まれないのに我慢して3時間を観終えた『ドライブ・マイ・カー』と同じ濱口監督による3つの短編集との事。予告編を観たら、意外と自分の好きな作風のように思えたので、映画館へ足を運んだ。あの映画がアカデミー候補になり、最近うるさ過ぎるくらいにあちこちのメディアで絶賛、大宣伝されている影響もあるようで、本当に映画好きな人達がそこそこ集まってる印象。
第一話『魔法』
タクシーに乗った若い女友達同士の長い会話。まだ特別な関係になってはいないが、奇跡のような出会い話が語られます。この長い言葉の応酬が実に見事なシナリオで、上手いな~と感じました。「下品で汚い言葉を使う事がカッコいい」と信じている、日本の中二病的な女子が良く表現されています。その後の展開も面白く、退屈だった『ドライブ~』とは違って、引き込まれます。しかしながら、この男女関係が見ていて非常に気持ち悪く、受け入れられないものを感じます。
第二話『扉は開けないで』
これもまた脚本力が素晴らしく、映像は良くても脚本がダメ過ぎて評判のワリにはイマイチだな~と感じる事の多い邦画界では、一線を画すモノを持ってると思いました。気持ち悪い大学生と不倫女のカップルがいて、男は単位取得を認められないからって、人が大勢見てる前でわざと大声を張り上げて土下座までする恥晒しなゴミクズ野郎。たかが就職内定がダメになったくらいで教授に恨みを抱き、女にハニートラップを仕掛けさせます。教授が賞を取ったベストセラー本の中に過激なセックス描写があり、これを女が朗読するシーンをやたらと長々と聞かせられるので、観客席の方ではどう反応すればいいのか、困ってしまうような空気感が漂っていました(笑)。性格が悪い監督の観客への嫌がらせでしょうか?人によっては不快に感じたり、気持ち悪く思うお客さんもいると思うので、余り安直に他人にはオススメしにくい映画かなと。物語は騙しに来たつもりの女が自分の弱さを告白したり、そんな彼女を励まして勇気づける教授と、心が繋がり合えるような良い関係になりながらも、最後の余計な後日談ですべて台無しになっています。最後のオチで人を崖から突き落として喜ぶような終わり方になってるのが残念。あの後日談で台無しにしなければ、もっとマシになった気がする。そもそもスマホの大事なデータはその場でやり取りすればいいだけなのに、わざわざ家でPC使うとか、疑問点も多い。それはともかく、ここで最も良かったのが、渋川清彦の演技の素晴らしさ!これには唸らされました。
第三話『もう一度』
一話と二話は気持ち悪かったですが、この三話はそれほどでもなく、ストーリーに少し無理がある気がしましたが、比較的良かったです。この三話だけだったら、他人にオススメ出来るかも。この三話だけメインの登場人物が若くなく、同窓会から帰った中年女性が昔の同級生らしき女性と偶然出会い、今まで経験しなかったほどの深い心情を吐露するような関係性に発展するところが見事なシナリオ。初めの2話とは違い、最後は新たな希望が抱けるような終わり方になっていたのも良かったです。
この監督は少し過大評価され過ぎている気もしますが、この映画を観ると、演出とか映画的手法の面で確かに才能が豊かな人なのだろうなと感じます。しかしながら、本当に人間として大事なもの、映画を観に来た人に与えられる大事なもの、それが決定的に欠けてるような感じがあって、それがどうも受け入れにくい何か嫌なものを感じてしまうんだと個人的に思います。こういう映画があっても面白いとは思いますが、やはり、親しい人に自信をもってオススメしたくなるような、そんな映画が私にとっての良い映画ですね。ちょっと辛口評価になりました。
追記:中盤辺りで、イビキをかき始めたお客がいました。映画館が好きで、ほぼ毎週来ていますが、イビキ客は久しぶりです。他の映画と比べて動きが少なく、会話劇で魅せるのがメインの作風だけに、眠気が生じる人もいるかもしれないなーと思いました。出来るだけ充分に睡眠を取って、映画館にお越しください。
心は風、言葉は花びら
心は風、言葉は花びら
風がどこから吹いてきて、どれくらいの強さなのか?
風向きがいつ変わったのか?
風は無味無臭なので感じることはできても、目に見えることはありません。
ただ、そこに花びらが加わると、その強さや風向きを見ることができます。
この映画はそんな映画でした。
会話劇で次々と役者さんたちのセリフが交わされるのですが、セリフが交される度に彼らの心模様が、あたかもそこあるかのように我々は確かめることができます。
上質でオトナの映画でした。
偶然でなく必然
内容とは関係ないですが、ある視覚障がい者の方が、「人生は偶然でなく必然です」と高らかに語っておられたのを何十年かぶりに思い出していました。なるほど確かに3本とも偶然かも知れない。いや、自分で自発的に引き込んでいるかも知れない。じゃ、何気ない自分の日常はなぜ起こるのだろうか?決して単調でも偶然でもありはしない。そんなこんなを、それこそ想像させてくれる濃密な時間でした。・・・・あの突然に緊張感に包まれる場面が素晴らしいですね。言葉の威力という表現では足りないです。私は2本目の教授の語りに助けられたかな。ありがとうございました。
タイトルとアイデアは秀逸だが…
う〜ん。予告編を観て、それなりに多少の期待は感じつつ、
とはいえ当日、特に過度な期待もせず、観に行った訳だが…
そんなフラットなマインドを超えるほどの内容ではなかった。
3話目は結構よかったけど。
1話目と2話目は、もう一歩で眠るところだった。
特に2話目は途中からイイ線いってたのにアノ展開はないわな。
あんな際どい音声データ、その場で直ぐメール送信させるでしょフツー。
と言うか、スマホ録音したデータを敢えてPCから送信するなど訳わからん。要するに御都合主義やね。
あと他にも現実味の薄れてしまう展開や設定によって、違和感が出てしまい随分と勿体なかった。
女の子が青山〜六本木〜渋谷へと一気に走り抜けたり(距離が長すぎるわ)
仙台の中心地から女性がゆっくり歩いて15分で住宅地に辿り着いたり(近過ぎない?)
思春期の子供がお気に入りのフィギュアを自室でなくリビングに飾っていたり…
些細な事だが、やはり神は細部に宿ると思うのだ。
他にも諸々とあったが、結局こういうのが続いてしまうと、役者がイイ芝居していても「所詮は作り話の絵空事か…」となってしまい、なんとも微妙にシラけた気分になってしまう。色々な箇所に都合の良い設定が現れていた。
まだ『ドライブ・マイ・カー』を観てはいないが、なんだか同じような気分になってしまいそうな予感がする。
ちなみに、女たらし役を小室某氏に似た俳優にしたのは、偶然?想像?
あと、どの作品も笑えたのは、結構以外であった。劇場内もみんな笑ってた。
次回作も出来れば、あのユルい笑いを、もっとやって欲しいが、不必要な御都合主義は、ホント勿体ない。ぜひ排除して欲しい。
ちょっとイラついたけど、それは私がおばさんになったからか。
しかし、年をとるのも悪くないかなと思わせてくれました。
若い頃特有の倫理を無視した自己中のこじらせさん、自分を特別な存在と思うあまり道を踏み外してしまうことがあっても、復元できる。30代までなら可能でしょう。
そして、中年期になると、自分の過去も含めてさらけ出すことができるような「親友」なんて、できるわけない、やっぱり学生時代の友だちが一番、、、なんていう人いますが、大人って大人なりの「友だち」が作れる創れる、それが手練れの大人ってものなのです。、、、ということが確認できたような気がします。そして過去の人への思いが強ければ強いほど、会わないでいることができるのも大人なのです。
全編トロイメライのメロディが印象的。たまに歩くたびにドキドキする(ちょっと怖いのです)青学の下のトンネル、確かに青山と渋谷をつなぐ通路でした。都バス内のロケっていうのも珍しい気がして、こんな会話してるようなたちって普通にいるかもと思わされました。
短編集というわりには3話の一つ一つを若干長く感じてしまったのは、例のゆっくりの平坦なセリフ回しのせいでしょうか。ともあれ3話この順番にはとても必然性がありました。
素晴らしき実験映画
前衛的な撮影スタイルと演技で成立している3話からなるオムニバス。
濱口監督はこんな作品までも撮れたのかと驚く。会話劇が中心なのは従来の濱口スタイルだが、難しく重厚な会話劇なのではなく、とても軽やかでウィットにとんでいるのが新生濱口といったところ。
ロメール やホン・サンスの語り口とロイ・アンダーソン的な演技を組み合わせたとでもいおうか、とにかく文句なしに面白いのである。
3話とも偶然と想像というタイトル通りの素晴らしさ。
これはスゴイ。
登場人物の言葉と言葉の豊かさ
3話のオムニバスです。ワンカットなのかわかりませんが、セリフ量の多さにアドリブもあるのかもと思いました。どちらにしても登場人物の豊富なやり取りがあるからこそ、作品の世界に入り込み、感情移入もしました。
所々吹き出して笑ってしまうようなやりとりの中に、励ましの言葉が散りばめられている。本当に面白かったです。
見ていて,とてもかゆい映画だったけれど,おおむね描かれている内容...
見ていて,とてもかゆい映画だったけれど,おおむね描かれている内容は深みがあって面白かった.プロットも時々驚きがあったり,自分の体験と共鳴する部分もあり,楽しみつつもいくつか思う事がある.3連休の息抜きにはちょうどいい映画で,視聴後に近所のタバコ屋で一服していると何となく幸せな感じがこみあげてきた.
気になったことは,1日目で描かれている不思議な魅力のある女の子と,それに振り回される男性のこと.この監督の他の作品でも,女性の不思議さ,神聖さ,分からなさに振り回される男性という描写がよく出てくる.作中に登場する女性のうちでも,男性と同じような合理的で自分をコントロール可能な主体として描かれている女性はとても分かりやすいんだけれど,その分かりやすい女性と対比する形で,分からない女性を描くことで際立って見える.今回は途中からその不思議な女の子の視点をとっていたのが面白かったというくらいか.彼らは彼らで悩みが深いのだと思う.自分は男性だけれど,女性と話しているときにいつも思うのは,何かしら悩みを抱えているときに知るべき対象が自分自身であるという事だ.対象がどうであるのかという事よりも,自分がどう思っているのかという事について考えている話をよく聞く.一方で自分の周辺の男性を眺めていても,自分のことを首尾一貫した意思決定をするとみなしていて,自然と外側に感心が向かっているようだ.この男性と女性の謎の周辺については,この監督以上に上手く表現できる人物を知らないかもしれない.おそらく他にもいるだろうから,知っている人は教えてほしい.
2日目では,オープニングのチープなやり取りに辟易したものの,その後の教授との対話のシーンが大きくしびれた.言語化することができない事を安易に片づけてしまうことなく,そこにとどまることを肯定するメッセージであると認識したけれど,結局教授はスキャンダルで追われてしまった.本当に肯定しているのかは謎のままではある.3日目では,初めのシーンが再現されたところで思わずうなってしまった.名前を思い出せないという事,思い出すという事が主題だったと思うのだけれど,結局最後に思い出した名前はどんな意味があったんだろう.むしろ名前なんてものが初めから存在していなかった,二人のやり取りは破綻することもなく続いていたんだろうにと思うけれど.
長いこと余韻に浸れる映画
短編小説を読んだ後にもう一度読んでみようかなと思うのと同じように、もう一度見てみようかなと思える映画でした。
傷ついて…人を傷つけ…面倒臭い女の子、感情の流出を避けるかのように言葉を発する小説家(教授)、過去の出来事に折り合いをつけたいと考えている(中年)女性。
この映画は自分が過去に感じた感覚だったり、あるいは関わった人達を思い出させてくれたりしました。懐かしかったり、切なかったり。それが嫌な感覚だったとしても、それはそれ、悪くはないな。
異彩で賛否分かれる、観た時は酷評次第に印象深く
2021年劇場鑑賞40本目 佳作 54点
上映初日に渋谷Bunkamuraにて行われた舞台挨拶で鑑賞
これは映画ではない、ただの会話劇で役者の棒読みも酷い、当方滅多に眠くならないのにちゃんと寝た。年間ワースト10入り間違いなし。
と、鑑賞数日は思っていた。
鑑賞から2ヶ月ほど経ってのレビューになりますが大筋気持は変わってない。けど色々な声を聞いたり思い返してみて、今作を真っ直ぐみるのではなく斜めくらいから観るとなんだか新鮮である種印象に残る映画体験だったなあとも思えてきた次第。
役者の棒読みはあえてらしい。知らんけど
またあの脚本ありきの会話劇から生まれる笑いは2021年邦画だとまともじゃないのは君も一緒や街の上でとはまた違う面白みがあったのは間違いないです。
映画好きや海外でこの監督のおりなすフィルムが評価されるのもわからなくはない、鬼才だとは思うよ。
けど免疫がないのかやっぱり今サイトの☆3.9はとても頷けない、それだけです。
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