「劇場で静かな笑いが起きた」偶然と想像 Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
劇場で静かな笑いが起きた
濱口監督のメソッドに感情を排して淡々と読むというのがあるらしいんだよ。それをやってきたのかなって思った。
三本のオムニバスで、タイトル通り「偶然、こんなことがありました」っていう話で人物を描いてんのね。みんな役者さんは感情を入れずに淡々と演技すんの。
話ももちろん面白いんだけど、スゴイと思ったのは、どの短編も必ず一度は笑いが起きるんだよね。それも「笑わせよう」ってわざとらしい場面じゃなくて、自然に「確かになあ」ってところで笑いが起きる。当然、監督は狙ってやってんのね。そこのワザが見事だと思った。
《魔法(よりもっと不確か》では、情報量の差で笑いを取るんだよね。
観客・古川琴音・中島歩……古川琴音と中島歩がかつて付き合っていたことを知っている
玄里……知らない
って状況を作っておいて、それで古川琴音と玄里がお茶してるとこに中島歩が通りがかって、玄里が喜んで呼んじゃうっていう。
《扉は開けたままで》と《もう一度》は驚き。「それ、言うか」っていう一言で笑いをとってくの。
三本どれも面白かったけど、ちょっとカッタルくはあるの。一本終わるたびに「もうエンドロールでもいいな」と思ったから。淡々とした演技だからしょうがないね。
《魔法(よりもっと不確か)》のオープニングは、古川琴音がモデル役で撮影されてて、玄里がヘアメイクなんだけど、観たとき「これならむしろ玄里を撮れよ」と思ったね。
そのあとタクシーで二人で話すんだけど、「これテキスト、男の人が書いたな」って感じたの。なんでだろ。淡々とした演技を玄里が徹底できてなかったとか、そんなところなのかな。
あと三本とも、二人で芝居をするんだよね。どのシーンも基本は二人。動きもなくて、でも、会話でもたせるのが脚本すごいと思ったよ。