「アクロバティックな対話ファンタジー小品集」偶然と想像 ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
アクロバティックな対話ファンタジー小品集
おそらく何をやってもこの方法論で楽しく見れる、そんなスタイルを確立している濱口監督。しかし誰もがこうは撮れないな、という3つのエピソード。
日本人監督として、というか海外の監督としても稀な論理的対話のセリフ劇、哲学的対話〜からのアクロバティックな決着へ。起承転結で考えても見事だな。そしてある種異常でもあるし、ある種リアリティしかないとも言えるこのセリフ劇を普通にこなすメソッドひっくるめてなんだか「円熟」とも呼びたくなる軽やかを持った小品集だった。あのズーム!
恋愛も復讐も再会も、何気ないリアリティから始まって、たいがい予想していた相手が予想以上の何かであって、たじろいで、でも克服していく、まさにゆらぎのドラマのような気がした。吐き出したキャラクターのたくさんの言葉から、また別次元の世界が生まれてそこで決着をつけていく、まさにFortune and Fantasy。親密な関係では話せない個性的な悩み、異様な悩み、わだかまり、が他者(赤の他人)へだからこそ炸裂する、というか他者だからこそ踏み込める私的悩みがファンタジーを生む、というか。
ちなみに劇場内はいっぱいで、ゲラゲラ笑えるくらい盛り上がりがあったし、確かに笑えるのだけど、その笑いじゃなくてもっと巨大な穴にスポッと入るのと同時なのでよくゲラゲラ笑えるな、と思いつつ観ていた。
しかし、配役もよく考えられている。ここはそこそこのキャリアでなくては、という人とここは初々しくていい人で、というか。楽しんで創造してる感じがしてよかったな。
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