「画面に滲み出る色気」仕掛人・藤枝梅安 TSさんの映画レビュー(感想・評価)
画面に滲み出る色気
まっとうに、誠実に作られた正統派時代劇。
チャンバラ、お上の悪事、濡れ場、食事、江戸の街並み、相棒との掛合い、悪役達の密談、人情話・・・。時代劇の構成要素をしっかり盛り込みつつ、重厚だがサラッと軽く観られる作り。
なにより登場人物一人一人のキャラがしっかりとしていて、俳優がきちんと演じている。
梅安演じるトヨエツと菅野美穂、天海祐希からは、身に纏う空気感が伝わってきた。滲み出る優しさ、色香、哀愁、怒り、冷徹さ。演技で画面の色味が変わるように見えた。
全般的に薄暗い画面は、電灯などなかった江戸のリアリズムを感じたが、この薄暗さが、かえって俳優たちの存在感を強める作用をしていたと思う。
年の暮れの夜、降る雪を一人縁側で見るトヨエツの顔。敢えてモノクロで撮ったこのシーンが渋い。
梅安の仕掛け(殺し)は、無言の一刺し。殺された者は何が起こったか解らぬままあの世へ行く。もっと針を打つ場所を変えて悪党に苦しみと恐怖を味わせる殺しの方法はあるだろうに。これが彼の殺しの美学か。それともせめてもの罪滅ぼしか。
そうそう、池波作品では無くてはならない食のシーンも随所に描かれていた。これが簡素(質素ではない)だが美味そうなものばかり。つられて湯豆腐を作ってしまった。
相変わらず顔圧の強い片岡愛之助(彦次郎)は少し違和感があったが、食卓を挟んで向かい合うトヨエツとの関係性が独特。
第2部はどうなるのか、楽しみである。
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