「善と悪は紙一重」仕掛人・藤枝梅安 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
善と悪は紙一重
"仕掛人・藤枝梅安" 二部作第1部。
通常スクリーンで鑑賞。
原作シリーズは未読(※現在は既読)。
映画らしい重厚な映像と多彩な演技陣によって、「仕掛人・藤枝梅安」の世界観が令和に新生。因果を巡る人間ドラマと華麗な仕掛けの技に魅せられ、匂い立つ様に発散される色気に酔いしれる、極上のハードボイルド時代劇だった。
藤枝梅安と云えば、男の色気と仕掛けの身のこなしが魅力的だが、本作で梅安を演じる豊川悦司はそれらを十二分に体現し、歴代の梅安役に負けず劣らず、素晴らしい演技であった。
仕掛人の掟と善悪の紙一重な境界に想いを巡らせながら、許せぬ悪を始末するべく動く梅安と相棒の彦次郎。因果は巡る糸車、残酷な運命の結末に胸がぎゅっと締めつけられた。
梅安が実の妹と知った上で標的の命を奪うシーンの寂寥感たるや、映像の薄暗さも相まってとても良かった。豊川悦司と天海祐希、演技巧者だからこその息の合った名演が沁みる。
第2部へのブリッジも見事だった。
[余談]
天海祐希の悪女演技が素晴らしい。死の刹那、全てを悟った表情になんとも言えない悲哀があり、強く印象に残った。
[追記(2023/02/10)]
池波作品の魅力のひとつとして、食の描写があると思う。本作もそれをしっかり描いていて、どれも全部美味しそうだ。
「こりゃうめぇや」と舌鼓を打つ彦次郎の表情と口調は最高の食リポである。観ていてとてもお腹が空いてしまった。
素朴だけど、シンプルがいちばん美味いんだよなぁ…
[以降の鑑賞記録]
2023/09/24:Lemino(期間限定無料配信)
2024/12/30:サンテレビ「年末時代劇」
※修正(2024/12/30)