「梅安さん、こいつぁうめぇや!」仕掛人・藤枝梅安 ますぞーさんの映画レビュー(感想・評価)
梅安さん、こいつぁうめぇや!
池波正太郎(1923-1990)
戦後日本を代表する時代・歴史作家
劇作家から小説家として身を立て
1960年には直木賞を受賞
「鬼平犯科帳」
「剣客商売」
「仕掛人藤枝梅安」
などの代表作を発表
忠実な歴史考証よりも
「造語」を中心にした
妙にリアリティのある表現の
独特の世界観でどんどん
読者を引き込む作風が
人気を博した
料理も精通しており
作中には詳細な調理法などが
記されドラマ化の際にも
撮影には一流料理人によって
調理された料理が並ぶ
徹底ぶりを現場に申しつけ
異様な高クオリティを実現
登場した料理のムックまで刊行
されたほどである
自分も死んだ父が鬼平の
大ファンだったこともあり
藤枝梅安も渡辺謙版が強く
記憶にありますが
でどうだったか
旧来の池波ファンもきっと
満足するクオリティで
大スクリーンで映える出来で
大変満足しました
逆に言えばこれほどの
作品はもう地上波で放送
されることがないのかという
寂しさすら感じるほど
時代劇そのものがレアな
時代になってしまいました
二部作一つ目のストーリーは
藤枝梅安の定番エピソード
「おんなごろし」
依頼人「起こし」の依頼を
元締「蔓(つる)」が吟味し
暗殺者「仕掛人」に前金で依頼
完了後に後金を支払う
という造語を含めた
池波ワールドが
いきなり展開します
配下の嫁に手を出した
エロ侍の仕掛を完了した
藤枝梅安が盟友の仕掛人
彦次郎の家に立ち寄り
ネギと醤油に粗削りの
鰹節をかけた
うまそうなお粥を馳走になる
というつかみはおkの冒頭
そんな裏稼業では凄腕の
仕掛人の梅安も表向きは
品川の評判の鍼医者
そこへ蔓の嘉兵衛が後金を
渡す用事でもう一つ依頼をします
その標的は高級料亭万七の女将
「おみの」
数年前に万七の旦那善四郎の後妻で
前妻は急死だったのですが実は
梅安の仕掛によるものだったのです
その依頼は嘉兵衛ではなく
田中屋久兵衛という
そう付き合いのない
元締によるもの
自分の仕掛が誰かを救いに
なっていればという願いも
空しく女殺しの因果かと
梅安は前金を受け取ります
早速万七へ足を運ぶ梅安
万七は評判の料亭だった
ものの女将が変わってからは
料理の質も落ち騒がしい店に
なったことを女中のおもんから
聞き出し身の上を案じつつ
標的の素性を探ると
そんな時に彦次郎が
よもや久兵衛から
元盗賊という噂のある
大工「為吉」の
仕掛を依頼されます
為吉を調べると彦次郎は
盗賊で間違いないと
確信します
なぜなら「元同僚」だったから
彦次郎は元盗賊だった
もののやり方に嫌気がさし
御座松の孫八を殺害して
金を奪って逃げた過去を
梅安との食事の際に
打ち明けます
為吉はその通りで
おみのとも旧知の中であり
万七襲撃を持ち掛け
ウザがらみするところを
梅安が締め上げて
追っ払いますが
そこで間近で見たのと
おみのも恐らく孫八の娘だと
彦次郎に告げられ
梅安もおみのが生き別れの
妹であることを確信します
この異様なほどの世間の狭さ
こそ池波作品!
梅安はその名の通り
静岡は藤枝の出で父が死ぬと
母は妹を連れて男と失踪
その男が孫八だったのです
梅安は妹が標的になった事に
驚きを隠せないものの
無事に生きていたこと自体を
喜ぶかのような笑みで寝転がる
シーンは印象的でした
さて
為吉の始末を終えた彦次郎
のところへ今度は久兵衛は
ある剣士の始末を依頼してきます
旗本島田大学の元から
女をさらってかくまう
ふてえ野郎だとの事
目星をつけ調べていくと
行きついた寺で梅安と
ばったり会ってしまいます
梅安は寺から往診を頼まれ
ありえないケガをした
女性を介抱していました
その道すがら以前
会ったことがある
凄腕の剣士につけられますが
逆につけ返して
事情を聞きます
その剣士は名を
石川友五郎と言い
島田大学の元で
仕えていたが
大学は万七のお得意で
女遊びが過ぎて
配下の妻に手を出し
自刃した両親の娘にまで
手を出したところで
我慢が出来ず
連れて逃げ出したとの事
その剣士の始末を
彦次郎が久兵衛から受けた
ことで田中屋と万七
おみのらとの繋がりが
ハッキリしたところで
まず梅安はさして
悪人でなかった万七の前妻
のいらぬ仕掛をさせた
久兵衛を始末
彦次郎は田中屋に顔を
出させてアリバイ作り
大学はその後寺へ急襲を
かけますがメチャクチャ
強い友五郎が立ちはだかり
彦次郎も加勢します
その間に梅安は
万七で寝ている大学を始末
その後おみのが出てきた
ところを最後の最後に
自分の正体を打ち明け始末
梅安の正体に
全く気づいておらず
善四郎を殺してくれたら
私を抱いてもいい
といった妹おみのの
最後の願いを聞くように
その後旦那も始末・・
たとえ妹であっても
蔓が見極めた前提の仕掛を貫く
後戻りできない修羅道
ただおみの始末の依頼を
吟味したのは嘉兵衛
その嘉兵衛の真意とは?
彦次郎がいつも「こいつぁうめぇや」
と感嘆するほどの食事に
梅安がこだわるのは
それが最後の食事になっても
いいように…
ハードボイルドな世界が
むんむん
ガキっぽいヒーローたちの
運動会にウンザリしていた
自分には刺さりました
これは海外の人にも見てほしい
と思います
スタッフロールが英字表記も
あったんで意識してる
んでしょうね
次作も楽しみ