「刺青と宿命は、背負うもの」鬼平犯科帳 血闘 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
刺青と宿命は、背負うもの
たまには時代劇も良いものです。って思ってたけど、ずっと時代劇でも大丈夫なくらい。配役、台詞回し、シーンの流れ、ビシッと通った話の筋。実は見たのは初めてだけど、流石は伝統の時代劇シリーズ「鬼平犯科帳」、二転三転する展開はどんな推理物にも負けていません。アクションとしても素晴らしい。テレビ時代劇に見られる華麗に撫で切る太刀筋とは違い、血のニオイまで漂うような斬り合うシーンは劇場版ならではでしょうか。
話の筋も面白い。最初は判りにくかった過去の伏線も徐々に明らかになってくる。怨みの連鎖も成る程と思う。相手が罪人だとしても、切り捨てるのは善か悪か。なかなか辿り着けない悪党の行方。最後の罠が見抜けなかったのは、やはりこの時代、本人認証のセキュリティーなんて無理ですからねw
はっきり説明しない部分も良いですね。血文字のダイイングメッセージが逆さなのは、被害者ではなく、あからさまに犯人である自分自身が書いたと鬼平に判らせるための挑戦状。そして、タイトルにかいた刺青。どう考えても過去の因縁で怨みを抱いたからこそ、彫った、というより右肩に背負った般若の面。こういうところは渋いですね。
渋いと言えば配役。芋屋の正体があの盗賊だって一瞬で判ってしまったのは火野正平さんの隠しようのない貫禄でしょうか。それに対して、おりんさんがあの手引きした女だと気づけなかったのは、志田未来さんの演技の賜物か、それとも私が鈍いだけなのかw
最後にスタッフロール。途中で先行きのシーンを挟むのもシリーズの続きを示す素晴らしいアプローチ。その際、俯瞰で写した江戸の町がなんとなく薄暗いのも、鬼平はまだまだ戦わねばならぬ暗雲の暗示でしょうか。
そして何より、世界で勝負する気満々の英語の併記。是非ともゴジラに負けじと国際的な活躍を期待したい。
そんな見事な仕上がりの時代劇。流石は老舗のシリーズ「鬼平犯科帳」でした。機会があれば、過去作品も見てみたいです。