「たとえ側の視点を考えてみると」ひらいて ボンボンのんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
たとえ側の視点を考えてみると
原作未読で、映画だけの情報を拾った感想です。
木村愛の恋は終わったといえるのでしょうか。
(原作では、たとえは振り向くことなく終わっている、とのことですが…)
暗い教室で下着姿でたとえの前に「あたしのモノになって!」と体当たりで挑んだものの、
「服着ろよ」
「暴力的でなんでも奪い取って人の気持ちなんか考えない」(父親に重ねてるのか
「離して」
しかも告白された相手に苗字にさん付け!
私なら再起不能になるかもしれない。
そして、たとえの冷酷さはこれだけじゃない。
表面的なキスと抱擁のあとに
「嬉しい?嬉しいなら態度でみせろよ」
超難題をぶつける。震えながらも口角上げる愛ちゃんに放った言葉。
「貧しい笑顔だね」
「瞳が薄暗い」
「自分のことしか好きじゃない人間の笑顔だよ」
と散々なことをぶつける。
「俺に向かって微笑みかけてみろよ」
けんもほろろにフッておきながら、
それを言うか!ここまで言われて笑えるはずないだろう!!なんと残酷!!
その時は何も返せなかった愛だが、
その後、話の展開で確実にたとえの心を動かしたポイントがある。
・毒父親を殴った
・賞もらえるハイレベルな桜の木のオブジェをつくるクリエイティブさ
・自分へのまっすぐな愛、純真さ
一度は愛の暴力さを否定したが、父親の一件で相手に立ち向かう強さが時には必要だったのだと気付かされたはずだ。
「自分に無いもの」で美雪を選んだのであれば、愛の強さや純真さも十分心を開く武器になったのではないか?
確かにボロボロの恋愛だったかも知れない。
でも、確かにたとえの心に刻まれたはず。
桜オブジェを蹴り倒した後の二人のシーン。
あのトラウマレベルの教室シーンからは対照的。
たとえの綺麗な手に包まれる愛は、メインビジュアルにもなっているが、すごく可愛くて可憐で、女の私が見てもドキッとさせられる。
たとえも、愛を見つめる瞳が素敵だった。
暗い教室でたとえが愛に放った超難題。
「俺に向かって微笑みかけてみろよ」
愛ちゃんクリアしてるし!!!
これだけの素晴らしい記憶は、愛とたとえに永遠に刻まれるはず。
それだけで、愛ちゃんは敗北じゃないと思います。
このまま美雪と仲良く東京で暮らす流れになっても、たとえと愛は特別な関係であることは変わらず、一生の思い出になるはず。
30代女。女子校で過ごしたので、このような青春記憶が私にはありません。
作間龍斗さんのことが気になったきっかけで鑑賞しましたが、それ抜きにしても、愛ちゃんを羨ましく思ってしまう程、私の記憶にも残った作品になりました。
3人と監督、今後のご活躍が楽しみです。