劇場公開日 2021年10月22日

「愛という名の毒」ひらいて 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0愛という名の毒

2021年10月30日
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鑑賞方法:映画館

知的

難しい

萌える

成績も良くクラスでも人気者の愛は、大人しく少しミステリアスなクラスメイトのたとえ君に惹かれている。
しかし、彼には糖尿病を患う秘密の恋人、美雪がいた。
抑えきれない感情と欲望から、愛はとある行動に出ていき…

なんだかよく分からなくて終始胸糞悪い、だけれど、とてつもなく衝撃的で大好きな作品に出会ってしまった。
とにかくこの2点!
①首藤凛監督の巧さ。
②山田杏奈の表現力。

①お名前だけは聞いたことがあったけど、作品は初めて。
原作も読んだことないけれど、綿矢りさワールドをしっかり映像として作り上げていたし、何より愛の変化を捉えた構成が巧い。
今泉監督作やサマーフィルムも担当した、岩永洋さんという方が撮影ともあって、映像美や構図も良い。
②山田杏奈末恐ろしすぎる。
『ミスミソウ』に並ぶベストアクト。
とにかく目が凄い。ただでさえ吸い込まれるような瞳なのに、愛の心情変化に合わせて加工してるのかと思うほど印象が変わる。
堕ちていくに従って現れる陰のオーラも怖すぎる。
芋生さんももちろん素晴らしかったんだけど、それ以上に杏奈様が強烈で…
自分の中での最優秀主演女優賞はほぼ間違いないかも。

インスリン注射、美雪の中に触れた後の手洗い、爪、父親へのメッセージカード、目覚ましアラーム、綺麗に折られた折り鶴。
一つ一つの描写がリアルで、残酷で。
嘘に囲まれた愛、縛られるたとえ、受容する美雪。
3人が辿り着く先とは。
傷つき傷つけ収まらない欲望。
表向きの世界に現れた闇に吸い込まれるも、もがき続ける愛。
本当の意味での優しい世界は、『かそけきサンカヨウ』の世界ではなく『ひらいて』の世界なのかもしれない。

ジャニーズ集客映画だったのは結果的に良かったと思う。
案の定ほぼ女性客だったが、上映前と後では明らかにざわざわの質が違う。
ちょっと趣味悪いけれど、なんだかその反応が嬉しい。
シネコンでこんなキラキラ映画騙しが大衆を惑わすなんて。
簡単に納得できない作品があってもいいじゃないか。
自分だって?と!が交互に頭の上に浮かんだもの。
年ベスかは分からないけれど、確実に記憶に残る作品。
また一緒に寝ようね。

唐揚げ