「映像センスと作家性が高次元で共存。脚本が平均以下。でも次も見たい監督なのは間違いない。」Arc アーク 東鳩さんの映画レビュー(感想・評価)
映像センスと作家性が高次元で共存。脚本が平均以下。でも次も見たい監督なのは間違いない。
「蜜蜂と遠雷」がとても良かった記憶があったので同じ監督の今作を鑑賞。
だが、これは決して面白い作品では無かった。
特に脚本が平均以下で、テーマから来る哲学的だったり詩的なセリフを人間が発するであろう自然な言葉に変換出来ていない箇所が多すぎて早々に臨界点を超えてきた。
シーンとシーンの繋がり、人の出入りも不自然で、見ているこっちが立ち止まって、
なんで次はこのシーンなんだっけ?
なんでこの人とこの人が今ここにいるんだっけ?
と理解する努力をしなければいけない箇所も多すぎた。
理解しようとしても理解できないご都合ワープも散見された。
観客に無駄なストレスを与えないような、上手い脚本家なら当たり前にサラッと使いこなしている技術を、この脚本家(協同脚本の監督も)が持ち合わせていないのが致命的だったと思われる。
しかし、演技が達者な役者が揃っていたので、致命傷はギリギリで回避できていた。
その一方で、映像センスと作家性が高次元で共存している点は評価したい。
決して予算が多かったとは思えないが、それでも鑑賞するに値するSF映画になっていたのは、監督の技量があったからだろう。
出演する作品を慎重に吟味しているような名優がたくさん出ていたのも、この監督への信頼感の表れでしょう。
ちゃんとした脚本家が手がけたハイクオリティな脚本とハリウッド並みの莫大な予算があったら、この監督はどんな映画を作ってくれるだろうか?
そう夢想せずにはいられなかった。
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