「もうちょっとコンパクトにならんか」Arc アーク ぷにゃぷにゃさんの映画レビュー(感想・評価)
もうちょっとコンパクトにならんか
原作読了済。映画「メッセージ」を見た後、原作者テッド・チャンを漁った時に、ハヤカワ文庫のセレクト集でケン・リュウを知った。この2人、何となく雰囲気が似てる。現時点でSF界の最高峰に位置する作家たちだそうである。そのケン・リュウが"エグゼクティブプロデューサー"だというので、期待していたんだけど…。名前だけなのかな。
ストーリーは割と原作にそっている。原作は短編なので、そのまま映画にすれば90分以内で終わると思う。しかし127分になった。感覚的に長い。途中で飽きてきた。原作からプラスした部分が、どうも間延びさせている原因な気がする。
不老不死の処置を受けられない人のために、島に施設を作る。施設はきれいだけど、島内の家や街並は昭和を感じる。古い漁船の燃料は、この時代でもあるのだろうか。ネガフィルムのカメラに、モノクロ手焼きプリント。あまり未来感がないなぁ。
ロケ地・小豆島の風景はモノクロでもきれいだった。俳優の演技は良かったが、見た目が若くて精神は円熟というのは、やはりわからなかった。あと、不老不死によって起こる世界の変容も、突っ込んで描かれておらず、ラジオ放送で説明されるのみ。材料を与えられて、自分で考えてということかな。何というか、話を詰め込んでみたけど表面なぞるだけで終わった感じで、全体的にコンパクトにまとめた方が、自分には合っていたと思う。
> ケン・リュウを知った。この2人、何となく雰囲気が似てる
自分もそう思います。自分は、二人とも「進歩は進歩。肝心なのは、人はそれを受け入れた上で、どうするかは自分で決めればよい」と語っているように思います。将来を見通す力(メッセージ)も、不老不死の技術(アーク)も、進歩なので当然受け入れるもの。受け入れた上で、どうするかは、各自が判断すること。
そう観ると、メッセージの方が原作の主題を生かしており、アークの方は、不老不死の技術に対する監督の忌避感が滲み出ちゃっているように思います。だから自分の感想としては、原作は明るく、映画は暗い。
映画は原作とは異なる別個の作品なので、その点をとやかく言う必要はないです。単に、自分が好きなテイストじゃなかったなあ、ということです。ただ、原作の明るいテイストのままの映画も観てみたいなあ…