「血とは何か 親子とは何か 考えさせられる映画」とんび YAS!さんの映画レビュー(感想・評価)
血とは何か 親子とは何か 考えさせられる映画
ドラマDVDを持っているが、未だに鑑賞していないので、その突破口として
この映画を観ました。原作も読んでいません。
とにかく この映画は撮影・照明が非常に素晴らしい。
部分的に、ほんの僅か、微スロー部分があり、NHKが撮るハイビジョンのような雰囲気が前半はしていました。
色合いもとても良かったです。
スタジオシーンは「寅さん」のような無難な照明と撮影だったが
「海に成れ」の夜のシーンでは照明が素晴らしく、更に引いたシーンにおいても違和感なく堅実な撮影だった。
但し、事故のシーンがスローだったのは、いかがなものか?
事故=スローモーションと、鉄壁教科書に書いてあるから、そうなったのか?
そんな稚拙なシーンが予告編にあったおかげで、僕はこの映画自体の鑑賞を躊躇してしまったくらいだ。
また、映画では絶品演技をしていた安田顕さんが 安男の自宅裏に、車を止めた筈なのに、帰る時にはその車が自宅前の橋を通り過ぎたのと、時間的な間の関係には大きな違和感を感じた。
また北村匠さんにおいても、全般的に非常に良い演技をしていたのだが、この旅立ちシーンの表情だけは違和感があった。
トイレ前シーンでは、こんな表情はしないと思う。
また章(旭)さんとは同じ年代のキャラがいないので、取り違うことは無いが、
各年代ごとの章さんがバラバラな雰囲気がしたので、傷とか喋り癖とか何か統一した目印があった方が良かった。
僕が脚本家なら、事故から、和尚さんからの手紙後位まで どもりぐせ にしたかなぁ
他の人物関係やキャラクターはスタジオ撮影と同じく、寅さん映画
安田顕さんと並び、好演義をしていた薬師丸ひろ子さん
主人公:安男が走り去るのを 店先で 見届けるシーンでは、おそらくアドリブ演技だと思うが"けのび"をいれたのも良い役者の証拠です。
そして彼女の店(夕なぎ)での実娘との対面シーンには涙しました。
シーン最後には彼女の集中力が落ちていましたが、それでも この映画で1番いいシーンでした。
僕自身が離婚により、子供から母親を奪ってしまった経緯があるので、心静かにこのシーンを観る事はできませんでした。
ただ、長期間合っていなかった関係の"親子対面"には お互いに相手の顔を観て、自分と似ている場所を思わず、探すものです。
それが"血の確認"というもの
この映画では、安男と父の対面以外にも"親子が対峙するカット"が多々でてくるが
どれもこれも。。。関心するくらい親子が似ていない。
いろいろな親子像を描くのが、この映画の
ミソに成るはずだが、監督は この映画のキャスティングに、親子の血と言うものを完全に無視した人選は 本作品のテーマに監督自身が興味ないのか 作品への思い入れのなさを感じてしまった。
また主演の阿部寛さんと薬師丸ひろ子さんは同じ年
阿部さんが「お姉ちゃん」と呼ぶには年齢関係にも違和感を感じました。
たえ子(薬師丸ひろ子さん)は若くして結婚して、すぐに家を出たのだから40歳程度、その娘は20歳程度になる筈だが。。。これをどう脳内処理していいのやら。。
年代ごとに代わる"瀬戸内運輸"のトラックは旧車等がいろいろ観れて、嬉しかったが、どのトラックもピカピカ奇麗すぎて、"仕事している感"がなく、
ここにも違和感があった。
主人公 安男(とんび)の息子である章(旭)は原作者である重松 清さん自身であり、自分の生い立ちを作品に重ね合わせて執筆されたものだと、途中から気づき映画を観ました。
予告編にはでてくるが、劇中誰も「鳶が鷹を産んだ」とは言っていないし、
それを表現する光景も比喩する事もない。。。
この物語を「とんび」としたのかは、なぞのまま。
せっかくの感動シーン「海に成れ」が以後の安男の人生に何も生かされていない。
そしてこのシーンは予告編を見る限り、
「安男が決心して、笑うシーン等」が上映映画ではカットされていた。
劇中の1つ1つの出来事に対して、安男は反応しているはいるものの、
亡き妻への思いや、子供 章に対する一貫した気構えとの繋がりがなく
その場だけの単反応を繰り返す"薄いキャラクター"には同調心が湧かない。
何度か「ダイナマイトが1500キロ(唄:小林 旭さん)がでてはくるが、
同郷者の和を感じさせるためにも 挿入歌をもっと生かした作品作りをした方が良かったと思う。
当然、地域名を表す歌詞に入る必要性があります。
北村匠海さんと杏さんの距離感が不自然だったので、感動の 夕なぎ でのシーンに水を差してしまった。
このシーンは母娘対峙と対比させるためにも最後は唄のシーンをまとめてほしかった。
全般的に取捨選択ができていないシナリオ構成でちぐはぐ映画
これでは原作は読む気がしないが、
自宅にあるDVDくらいは 近いうちに観てみる事したいと思った。