「成熟の物語の心地良さ」とんび グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)
成熟の物語の心地良さ
小さな町や村、あるいは企業やその地域に限定的な産業の城下町…。
たぶん、人が共同体というものを構成するようになってからの〝子育て〟というのは、その共同体全体の責任だったのだと思います。
昔は子どもを産んだと同時に亡くなってしまう女性もかなりいたはずですし、その共同体にとっても将来必要な働き手であり、害をもたらす人になっても困るので、みんなで見守り(遅い時間まで遊んでいると怒ってくれるオジサンやオバサンもいた)、構ってくれた。
そういう社会的労力は、昔は共同体の構成員が無償で分かち合っていたが、時代とともに税金や福祉制度(お役所)の仕事となり、個々人が他人の家庭に口出ししたり、構うことは余計なお世話になってしまった。
非常に大雑把にいうと、そういう古き良き時代のいい面だけを掬い上げた物語なので、心地良さと感動に包まれるのはある意味で当たり前なのだと思います。
成熟した大人の多い成熟した共同体の中で、成熟しきれない男(阿部寛)の子育てをみんなで見守る物語。
未成熟なとんびと成熟した共同体に育てられ大人になった鷹の物語。
そういう見方で対比すると、香取慎吾さん主演の『凪待ち』は未成熟な共同体と未成熟な大人がお互いに成長出来なかったケースが招いた不幸の物語だったように思えてきます。
NHKの朝ドラもほとんどの場合、主人公の生まれ育つ共同体には成熟した大人が多く、何が起きても、きちんと受け止めてみんなで成長していきます。歳を重ねても若輩の人間から学ぶ姿勢を失わない謙虚な大人に恵まれています。
成熟とは、完成形ではなく、絶えず成長する意欲を持ち続けることでもあるのですね。
おじいちゃんの人生は幸せだったのかな?
成熟の共同体の中で、自身も成熟の過程を経た人生が幸せでないなんてことは絶対にありません。
はじめまして。グレシャムの法則さん。
みかずきです。
私のレビューに多くの共感を頂き、ありがとうございます。
NOBUさんからグレシャムの法則さんに私のことを紹介したとの連絡がありました。
私、10年近く映画レビューは書いていますが、こちらのサイトには本年2月に登録したばかりです。宜しくお願いします。
こちらのサイトはレビュアーさんの数が多いので、グレシャムの法則さんを始めとして多士済々のレビュアーさんのレビューを拝読するのを楽しみにしています。
さて、本作、何度かTVドラマ化されている作品ですので、既視感のあるストーリーでしたが、配役が素晴らしかったです。特に、阿部寛、麻生久美子、北村匠海は最適役でした。
では、また共感作で交流させて下さい。
-以上-
今晩は。
”成熟の共同体の中で、自身も成熟の過程を経た人生が幸せでないなんてことは絶対にありません。”
佳きレビューですね。流石です。
私の居住区では(古いので)地域共同体がギリギリ存続していますが(総代、副総代、自警団団長、子供会・・)他の地域はどうなんでしょうか。
個を重んじる現代、この映画の世界観を肯定的に観る人が少なくなっているとすれば、寂しいなあと思います。
けれども、今作を映画館で見た際には、あちこちから涕泣が聞こえてきましたし、その後観た作品ではエンドロール途中でゾロゾロと席を立つ人が居ましたが、今作は皆無。
で聞こえて来たのは”良い映画だったねえ。(多分50代以降の方々)”という複数の声。少し嬉しかったです。あ、返信不要です。では。