「情熱的な歌唱には興奮したのだが、公開があまりにも遅すぎた」アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
情熱的な歌唱には興奮したのだが、公開があまりにも遅すぎた
素晴らしい映画であることは間違いないのですが、正直私には合いませんでした。これは完全に個人の好みの問題なので、作品の質が低いとかそういうことでは決してありません。以前マイケル・ジャクソンのライブ映画『THIS IS IT』を鑑賞した時も実感したんですけど、こういう音楽映画はどんなに周りの評価が高くても合わない人にはとことん合わないんでしょうね。
私は以前、ジャニーズアイドルである嵐のライブ映画を絶賛しました。しかしそれは嵐のメンバーについて知っている状態で、尚且つ馴染みのあるJ-POPの曲だったから楽しめたんです。本作については私はアレサ・フランクリンというシンガーについても全く知識がありませんでしたし、曲も私の好みとは異なるものだったので、1時間30分ほどの上映時間は全く知らない曲を全く知らない人が歌ってるのをただ見せられているだけでした。
技術的な問題で映画の公開が撮影から半世紀経ってしまっているのが大きかったと思います。アレサ・フランクリンの知名度が高く、劇中で語られているように「知らない人はいない」くらいの存在であったならば、非常に楽しめたと思います。アレサ・フランクリンという偉大な存在であっても、半世紀という年月はその存在を遠い過去のものとするのに十分だったということでしょう。
もちろん彼女の歌唱力や表現力の高さは初見の私にも伝わるほど素晴らしいものでしたので、アレサ・フランクリンという伝説的歌手を知っている方やゴスペルやソウルに造詣の深い方は観ておいて損は無いと思います。
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「ソウルの女王」と呼ばれた伝説的女性シンガーであるアレサ・フランクリン。彼女が1972年に行なった、ロサンゼルスの教会での観客を入れての公開レコーディングを収録した映像を編集したライブ映画。当時は技術的な問題で公開ができなかった映像を、現代の技術で編集し、完成に至った。
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二日間にわたる教会での公開レコーディング(ライブ)の様子を撮影し、映画として編集したものです。冒頭にアレサ・フランクリンという人物についての申し訳程度の説明が挟まれる以外は基本的にはレコーディングの様子を流しているだけです。アレサ・フランクリンについて知っている人からすれば、半世紀近く公開されていなかったライブ映像が観ることができて感無量かと思いますが、如何せん私はアレサの名前すら聞いたことがなかったので、そういう感動は一切ありません。
事前知識が無い私が不満に感じたのはそこなんです。完全にファン向けの映画になっていて、「アレサ・フランクリン?どちら様?」という感じの私のような人間は置いてけぼりにされているような感覚がありました。彼女がどれだけ凄い人物なのか・彼女の人気がどれほどのものだったのか・この公開レコーディングに彼女がどれだけの情熱を掛けていたのかを事前に知ることができれば、もっともっと楽しむことができただろうと感じます。
私は以前ジャニーズアイドルの嵐が活動休止前に行った大型ライブを映画にした『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』をレビューした時も、「彼ら(嵐のメンバー)のひととなりや解散などの背景を知っているからより楽しめる」と書きました。もしも「どこのだれかも分からない人のライブ」だったなら、全く同じクオリティの映画だったとしても感想は全く違うものになっていただろうと思います。
もしもアレサ・フランクリンを知らずにこの映画を鑑賞しようとする方がいらっしゃるならば、まずは彼女の業績や人となりを事前に調べてからにした方が良いとアドバイスしたいですね。それをやるとやらないとでは、この映画を観て感じる印象は異なるものになると思います。