「恍惚、陶酔、死と快楽(音楽)」アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン hatakeyamadさんの映画レビュー(感想・評価)
恍惚、陶酔、死と快楽(音楽)
私は無宗教だし、日本人の大半は正直無宗教だろうと思う。
ただそれはこの儀式を観に来ていたミックジャガーとて同じこと。
ロンドンのひとたちはアメリカ人の宗教観とかなり隔たりがある。
ミックジャガーが最初遠巻きに一番後ろから観てるでしょ?たぶん遠慮していたんじゃないかな。かれはとても育ちが良いんです。そんな気がする。ただ最後の方では前の方で観てますね。かなり楽しんでるようです。
アレサフランクリンの、というか、もうこのレベルの音楽体験になりますと、宗教もクソもない気がします。恍惚と官能そのものといいますか、もはや自分の中に受信できるアンテナが設置されているかどうかだけかと。
コーネルデュプリー(ギター)、チャックレイニー(ベース)、バーナードパーディー(ドラム)のバックは無敵艦隊のようにどのような展開にも即座に対応し、都会的なソウル、ファンクミュージックを展開する。ロンドンの人がそこまで神を信仰していないのにこのミュージックにハマるのはこのバッキングによるところも大きい。レコードでソウルを聴く私にとっては神みたいな人たちなので、ほんとに幸せな体験でとても貴重な映像です。
爆音のこのマスタリングにはプロデューサーのアリフマーディンが関わっていると最後に字幕で流れました。耳がいい人がマスタリングすると音作りが全然違いますね。ベースとドラムの臨場感が半端ない。これは映画館で観るべきでしょう。モノラル盤のアナログレコードのようなマスタリングです。
サマーオブソウルが無駄なことばかり編集して駄作になったのと対照的に、無駄が一切ない構成。大傑作である。
序盤で進行役の神父さんが突然ブルースを歌い始めるのに驚きました。教会でブルースって御法度なんですよね。この神父さんかなり進歩的な方みたいだ。「今夜は踊りますよ」って言ったりとか、終盤でも女の子が突然かっこよく踊り始めますよね。説明されなくてもこの神父さんがどんな人かわかります。
特に終盤の興奮した観客の1人が暴れ出して4人がかりで押さえつけるシーンがハイライトで、やはり素晴らしいドキュメンタリーというのはこういう奇跡のような瞬間を逃さず撮ってるんだなーと感動。
ここでの評価の低さが、すなわちもはやこのやうな音楽を楽しむ土壌が日本にはないのではないか、という懸念にもつながる気もします。寂しいね。山下達郎やピーターバラカンが嘆くよ(笑)ロッテントマトの評価、トマトメーター99%ですからね。オーディエンススコアも80%。日本と海外のオーディエンスの評価の乖離を最近つとに感じます。はっきりいって嘆かわしいと思ってます(笑)理解力、感受性の衰えが目立つ。あー失礼。