「これが公開できなかったなんて、アレサ・フランクリンもシドニー・ポラックもさぞ心残りだったろう…、と故人を偲ぶ一作。」アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
これが公開できなかったなんて、アレサ・フランクリンもシドニー・ポラックもさぞ心残りだったろう…、と故人を偲ぶ一作。
アレサ・フランクリンの歌声で劇場が震えるという、希有な体験ができる本作。映画館の客席でも、画面に併せて拍手したり身体を揺らしている人多数。力強いが透明感のある彼女の歌声が、スクリーンと客席の垣根も溶かしてしまったようです。上映中何度も劇場に足を運んだけど連日満員でなかなか鑑賞できませんでした。しかしそれでも観る価値は十二分にありました。
1972年に行われたこのライブの様子を収録したアルバムは、ビルボードチャートで7位となるなど、彼女の全盛期を代表する一作となっています。映像は出演者、観客は汗だくで曲を聴き、歌い、躍っている様子を映し出していますが、これは単に彼らが熱狂しているだけではなく、明らかに撮影用の照明の熱が原因しています。予告編の「ハンカチではなく、タオルの準備を」という言葉は、(ちょっと事前の印象とは違ったけど)伊達じゃない!そこまで準備して撮影した本作が、これまで公開できなかったなんて、監督のシドニー・ポラックもさぞかし肩身の狭い思いをしたんじゃないかなー。なお、未公開だった理由は、映像と音楽を同期させるための合図となるカチンコを写し忘れていた、という技術的というか人為的なミスによるものとのこと。
映像にはちらっと観客席でライブを楽しんでいるミック・ジャガー(とチャーリー・ワッツ?)の姿も写されます。たまたまロサンゼルスで収録があったため、このライブに参加したとのこと。彼が率いるローリング・ストーンズは、ブルースなどの黒人音楽を積極的に取り入れて自らのスタイルを確立してきました。もちろん彼らの音楽性はそうした先達に対する深い敬意に裏打ちされているんだけど、一方で現代的な視点では「文化盗用」と取られかねないような取り入れ方もしている訳で…。だけどこういったライブにちゃんと一観客として顔を出す几帳面さはほんとすごい。ストーンズは元々好きだったけど、改めて見直しました。
伝説的なソウルの女王が熱唱し、観客も総立ちで歌い、躍っているにも関わらず、客席に一人、居眠りしている女の子が一瞬写ります。これが本作一番の衝撃!
寝てる子、見た見た‼️(笑)
あれ、コンサートの収録が深夜に及んでしまったのか、
あるいは、(この可能性も非常に高い)あの子にとってはあのゴスペルの怒濤のビートは、胎内にいた時分からの母親の心音に似て、絶対安心の教会の“子守唄”だったのか⁉️
突然コメント失礼しました。