劇場公開日 2021年4月23日

  • 予告編を見る

「見たくないものがマスキング越しにこれでもかと見せつけられる今ここにある危機にゾッとするドキュメンタリー」SNS 少女たちの10日間 よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0見たくないものがマスキング越しにこれでもかと見せつけられる今ここにある危機にゾッとするドキュメンタリー

2021年5月15日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

未成年者がSNSを通じてどんな危険に晒されているのか?それを観察するために本作の制作スタッフは小学生にしか見えない幼い顔立ちをした女優を募集。オーディションで選ばれた3人の女優に自宅から私物を撮影スタジオに持参してもらい、3人が幼少期に過ごした子供部屋をそれぞれ再現。そこにカメラを据えスマホとPCを用意し、それぞれ偽名で12歳の女子としてSNSにアカウントと作成するとどんな人達がコンタクトしてくるかを10日間観察する。彼女達を守るために用意されたルールは7つ。

1.自分から連絡を取らない。
2.自分が12歳であることを告げる。
3.誘惑や挑発と取られる言動はしない。
4.露骨な性的指示は断る。
5.何度か頼まれた時のみ裸の写真(あらかじめ用意したフェイク写真)を送る
6.こちらから会う約束は持ちかけない。
7.撮影中に困ったらいつでも待機している精神科医や弁護士に相談する。

彼女達にコンタクトしてきた成人男性は実に2458人。そこに確かに実在する男達が次から次に浴びせてくるインモラルな言動に果敢に挑み続ける3人。やがて製作スタッフの1人があることに気付き、撮影は想定外の展開へと急激に加速していく。

これはもう想定していた以上にエゲツない作品。次から次に現れる魑魅魍魎達の顔と局部はギリギリマスキングされてますがそれを3人は直視し、臆面もなく繰り出してくるインモラル極まりない要求に、どんな過酷な10日間になるかを覚悟して引き受けたはずの彼女達が激しく動揺する様は見た目が幼いことも相俟って非常に実に辛いもの。そんな凄惨な撮影風景に挿入される専門家達が読み解く彼らの素性に子供達が日々恐ろしいリスクに晒されていることが暴かれていてゾッとします。特に驚いたのは彼らのうちペドフィリアが占める割合はせいぜい数%とごく少数だということ。であれば今目の前で繰り広げられていることは決して他人事ではないことをシレッと知らされてるのは残酷過ぎます。しかしそんな掃き溜めにも救いがないわけでもないこともしっかり刻んでいるのでそれが垣間見えた瞬間に思わず泣きました。

そして終盤彼女達はある行動に打って出るわけですが、そこで明らかになる事実もまた重量級、盛大にウンザリさせられます。しかしながら、そんな絶望感をチャラにするのが凄惨な体験をやり遂げた彼女達の勇ましい姿。着実に経験値を上げながら次第に逞しさを表情に滲ませてくるのをしっかり捉えているので、見たくないものをこれでもかと見せつけられているのに後味の悪さはそんなに残りません。

とはいえ、小さなお子様をお持ちの親御さんは早く家に帰りたくなるやつだと思います。

よね