「スーパーアクアマンブラザーズ」アクアマン 失われた王国 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
スーパーアクアマンブラザーズ
何だか日本じゃ『ワイルド・スピード』の監督&キャストが放つアクアライド!…なんて宣伝してるけど、これ、『アクアマン』の第2弾だかんね。
確かに日本じゃ『ワイルド・スピード』の方が人気あるし、それで推した方が強いかもしんないし、今ヒーロー映画人気が下火だし、“アクアマン”って言っても見てない人も多いだろうけどさ、でも、これ、『アクアマン』だかんね。それに監督のジェームズ・ワンも主演のジェイソン・モモアも『ワイルド・スピード』に関わったのは一回だけだかんね。
またもや日本の配給会社の宣伝には困っちゃうけど、当の本人は知ったこちゃあねぇぜ!
海底王国の王にして、海のワイルド・ヒーロー、アクアマン!
全世界で大ヒットし、待望の第2弾となるのだが、今回アクアマンに課せられた使命は大きい。
再び海や世界の危機を救えるか!?…もあるのだが、それ以上に、陰りが見え始めたヒーロー映画人気。殊に、不振続くDCEUの救世主となるか…!?
奇しくも、DCEU最終作。
まず、アクアマンの近況に驚き!
こ、子供…!? いつの間に…!?
勿論メラとの間の子なのだが、ヒロインで妻のメラ、前作より出番減った。アンバー・ハードさん、何かあったんスか!?
でも、子供は可愛い。まだ赤子のアーサーJr.に、アクアマン=パパアーサーは育児に奮闘。
海で事件や事故が起きたら颯爽と駆け付ける。
王でもあるので、その公務。頭固くてカビの生えた連中の話にチョー退屈…。
育児にヒーローに王として。
自分が父親になって改めて思う。俺を男手一つで育ててくれた父さんはスゲェ。本当のヒーロー。
父としてヒーローとして先輩の父親からアドバイス。やり続ける事。
もう一つ思う。俺は王に相応しいのか…?
イケイケワイルドに見えて、ひっそり悩みも。
そんなナチュラルさがジェイソン・モモアの魅力。もはやアクアマンとは一心同体。
その頃、遠く離れた南極で…
氷の下奥深く。古代遺跡を発見。
それは、“失われた王国”。かつて海底にあった7つ目の王国、ネクラス。
アトランティス初代王アトランの弟=コーダックスが“ブラック・トライデント”の呪われた魔力と強大な力で世界を滅亡させようとしたが、アトラン王によって封印。歴史から抹消された筈だった。
決して復活させてはならない存在と力。
それを発見してしまったのは、アクアマンへの復讐に燃えるデヴィッドこと“ブラックマンタ”であった…。
前作で父と共に海賊をしていたが、アクアマンに父を殺される。特殊スーツに身を包み、“ブラックマンタ”として挑むも…。
ヴィランの一人ではあったが、前作はアクアマンと弟オームの闘いが主軸でラストバトルの相手でもなく、復讐と因縁の始まりが描かれた程度。
前作のラストでアクアマンに敗れ海を漂流していた所を、アトランティス研究のシン博士に助けられ、復讐は持ち越し。
が、前作でアクアマンに呆気なくやられたのに、強敵なりうるのか…?
“ブラック・トライデント”を手にした事により、脅威的な力が…。
ヤーヤ・アブドゥル・マティーン2世が前作より出番増し。いよいよ今回強敵として立ち塞がる。
失われた王国の闇の力とそれを備わったブラックマンタの復讐。
海のみならず、世界の危機。さすがのアクアマンも一人では無理。
そこで、相棒。出来れば組みたくないけど、アイツしかいない。
王の座を懸けて闘い、殺されかけた。前作で争った敵であり、血を分けた弟。オーム。
彼は今極刑人として、海底人には地獄の砂漠の牢獄に。身体は痩せ細り…。
まずはそこから脱獄させる。
何とか成功するも、本当に大変なのはここから。
兄弟であっても、かつての敵同士。こちらもこちらで因縁。言葉ややり取りの端々に火花バチバチ。
性格も真反対。ワイルドな兄と堅物な弟。
あちら(マーベル)も兄弟で激しいバトルと世界の危機に挑んだが、こちら(DC)も。
険悪兄弟で世界の危機に立ち向かう!…って、大丈夫か!?
頼れる弟/相棒か、それともやはり信頼出来ぬ敵か。パトリック・ウィルソンが続投。
単純に話的には前作の方が良かった。選ばれし者、ヒーロー活劇、王としての目覚め…。
今回も悪くはない。昨日の敵は今日の友。前作の敵と組み、更なる脅威に挑む。
王道ではあるが、やはりこのパターンか…。何も本作に限った事ではないが、ヒーロー映画続編の宿命。ワンパターン。
同じ王道でも前作の方がエモーショナルでドラマチックで盛り上がりがあった。
ヒーロー映画人気下火も拍車をかけ、全米では興行・批評共に前作を大幅に下回り。
だからと言って全くの期待外れやつまらなかったではなかった。唯一がっかりだったのはウィレム・デフォーの降板。演じたバルコは病死って…。
確かに前作の方が面白かったかもしれないが、本作にも本作の面白さはあった。
前作でも形容したが、“海のスター・ウォーズ”や“海のロード・オブ・ザ・リング”。
海のゴロツキどもが集まる町やそこを治めるジャバ・ザ・ハットみたいな奴なんて、『スター・ウォーズ』。
闇の勢力の城やクリーチャーは、『ロード・オブ・ザ・リング』。
それら以外にも古代のハイテク機器や潜水艦は『海底2万マイル』みたい。
宣伝文句の“アクアライド”体感のビジュアル、アクション、スケール、見せ場、迫力はたっぷり。何だかんだエキサイティング!
また、アトランティスは“海の国”、オームが囚われていたのは“砂漠の国”、ある島では虫などが巨大化していて“巨大の国”、南極は“氷の国”、失われた王国は“暗黒の国”。兄弟の冒険…って、これ、『マリオ3』やん!
(※あくまで私個人的な見解です)
アクアマンとオームの活躍こそ一番の見所。
最初は何かとぶつかり合う。
しかし、危機に二人で立ち向かう内に…。
前作では闘った二人がタッグを組む。ベタではあるが、胸アツ。
兄弟の絆。弟と呼ぶな、と言っていたオーム。ラストでアクアマンに○○。多分そういう展開になると分かっていても、熱くさせるものがある。
人の心の奥底にある、善。
前作で人間世界に侵攻しようとしたが、オームも根っからの極悪人ではない。
ブラックマンタに利用されるシン博士も。ブラックマンタの野望に恐れ、終盤ある者を守ろうと抗う。
ブラックマンタだってアクアマンへの復讐に燃えているが、世界を滅ぼそうとする脅威ではなかった。
その復讐心につけこみ、ブラックマンタに取り憑いたのは…。
闇。絶対的な悪。
ふとしたきっかけでつけこまれ、堕ちてしまう。利用されてしまう。
対話による和平は理想。でも、分かり合えない脅威も存在する。
闘うのは、守る為。救う為。
海の様々な種族が。国同士が。かつての敵同士が。
仲間が。兄弟が。家族が。
エンタメ手腕より、ホラー『死霊館』でも、アクション『ワイルド・スピード』でも、そしてこの『アクアマン』でも、ジェームズ・ワンは一貫して描いている。
それを訴えたラストシーンのアクアマンのスピーチ。
架け橋になる。あたかもそれは劇中や現実世界のみならず、DCEUからDCUへかのよう。
ジェームズ・ガンよ、新生DCUよ、無駄にするな。
アクアマンからのメッセージ。
そして、ワイルドに行こうぜ。
海底王国の王にして、THEヒーロー。THEエンターテイメント。
俺が、アクアマンだ。
あれですね。
困った時の原点回帰。
善と悪、強き者と弱き者、支配する者と抗う者…
トールキンの指輪物語の偉大さと普遍性がピーター・ジャクソンによって具体的なイメージとして定着したのですね。