劇場公開日 2024年1月12日

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「人類と海底人の共存の流れに説得力がなく、新機軸も感じられないが、タコ型ビークルだけは見応えがある」アクアマン 失われた王国 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0人類と海底人の共存の流れに説得力がなく、新機軸も感じられないが、タコ型ビークルだけは見応えがある

2024年1月15日
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アクアマンとオームの兄弟が、いがみ合いながらも協力していくバディ・ムービーとしては、それなりに楽しめる。
だが、主要な登場人物は前作と代わり映えしないし、戦いの構図も、アクアマン✕(オーム+ブラックマンタ)だったのが(アクアマン+オーム)✕ブラックマンタに変わっただけなので、どうしても前作の焼き直しのように感じてしまう。
それでも、地上人のブラックマンタ(ケイン)が敵になったからには、いよいよ海底人対人類の戦争に発展するのかと思いきや、結局、最後まで海底王国同士の「内輪もめ」に終始して、またもや人類は蚊帳の外に置かれることになる。
そのくせ、ラストで、海底王国が人類の前に姿を表し、共存共栄を呼びかけるのは、あまりにも脈略のない唐突な展開で、違和感しか覚えなかった。
アクアマンは、国王の権力を剥奪しようとしていた評議会の面々や、人類に対して敵愾心を持っている半数の海底人を、どのようにして説得し、納得させたのだろうか?
古代燃料を奪取したブラックマンタの行動は、地上人に対する海底人の怒りを増幅させる以外の何物でもないし、かと言って、海底人には、「地球温暖化」を、地上人の力を借りなければ解決できない「共通の敵」と認識している様子もないのである。
唯一、シン博士の捨て身の行動だけが、海底人に、地上人の善良さをアピールするきっかけになった可能性があるが、これにしても、アクアマン(アーサー)とメラの息子を助けただけなので、全海底人に「それならば、地上人と仲良くなろう」と思わせるような理由にはならないだろう。
アトランティス帝国を、MCUのワカンダ王国のような位置付けにしたかったのかもしれないが、そうであるならば、そこに至るまでの経緯は、もっとしっかりと描かれるべきだったと思えるのである。
ところで、全体的に既視感ばかりで、これといった新機軸が感じられなかった本作だが、ブラックマンタ側で使用されていたタコ型のビークルだけは、そのデザインと機能に目を奪われた。これにしても、「マトリックス」に出てくるセンチネルのような既視感はあるのだが、触手を利用して海中、陸上、空中を機動するその姿からは、「ラピュタ」のロボット兵(あるいは「さらば愛しきルパンよ」のラムダ)を彷彿とさせる機能美が感じられ、敵メカにしておくのは惜しいと思ってしまった。

tomato