「オーストラリアの開拓史における伝説的義賊ネッド・ケリーの映画はこれ...」トゥルー・ヒストリー・オブ・ザ・ケリー・ギャング カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
オーストラリアの開拓史における伝説的義賊ネッド・ケリーの映画はこれ...
オーストラリアの開拓史における伝説的義賊ネッド・ケリーの映画はこれまでにたくさんあるらしい。しかし、私は今回が初めて。
1917のジョージ・マッケイが主役であったが、幼少期のネッドを演じた子役 が根っからのワルにはとても見えず、子沢山のアイルランド人家族の長男の苦悩、母親エレンに対する複雑な思いを考えるとすごく胸が痛くなった。
妹のメアリーも警官に盗られ、警官に対する怨みは筆舌に尽くしがたいものであったことは想像に難くない。
母親に売られた先の山賊(アオラレの主役ラッセル・クロウ)には父親替わりの強い男としての畏敬の念を感じただろう。私も感じた! 彼の反逆者としてのイニシェーションを授けた男だったんだと思う。だから、母親を恨んではいないのだろう。一家を支えていたのは明らかに肝っ玉母さんだった。刑務所で親子が抱きあうシーンがある。ネッドは母親の釈放を最後に要求したが、認められなかった。
母親の親戚スジも悪党が多く、それゆえ、警察にマークされ、何度も投獄されて、投獄されればされるほど強くなる支配者に対する憎悪。兄弟はじめ、彼についてくる若者がなんと多かったことか。
軍艦からヒントを得た鉄の甲冑は特攻兵器を想像してしまい、悲壮な気持ちににさせられる。軍隊から蜂の巣にされるシーンの壮絶さ。
もともと流刑地として始まったオーストラリアの黒歴史だと思うのだが、ネッド・ケリーは民族の多様化の進むオーストラリアにあって、イギリス系国民の英雄に祭りあげられているような気もする。昨年観たナイチンゲールもおもいきり酷い場面が非常に多かったが、オーストラリアという国は恥ずかしい部分を上手に隠すことに長けている気がする。