「娘を自殺で失ったザックスナイダーからのラブレター」アーミー・オブ・ザ・デッド 侍味さんの映画レビュー(感想・評価)
娘を自殺で失ったザックスナイダーからのラブレター
今作は、ジャスティスリーグ制作中に娘を自殺で失ったザックスナイダーの心中にある「父親と娘の和解」がテーマの作品である。
と断言しても良いのでは。
ゾンビのリメイクから長編映画に参入し、300やウォッチメンなどの原作ものの映像化で脚光を浴び、その後のオリジナル作品で若干こけつつ、DCユニバースをマーベル連合と立ち向かう大役を任され、苦戦しつつも多忙だったザックスナイダー監督。
おそらく、今作の主人公である父親とその娘のように、2人の間には大きな溝があったのでは無いだろうか…
マッチョでありながら心が優しく、それでいてただただ不器用である主人公。
娘に理解を得ようにもその方法が分からず2人の溝は深まるばかり…
紆余曲折があり、娘と決死の作戦に挑む事なり、そこからは、もはや既視感しかないシナリオをザックスナイダーらしいセンスで程よくまとめた世界観は、そう悪くはない。
ただ、ゾンビものとしては、半年前に劇場公開された「感染列島」の方が新鮮味もあるし、テンポも良い。そして韓国もの特有の程よい御涙頂戴シーンでカタルシスもある。
正直、今作は数あるゾンビものとして、その設定も使い古しだし、ビジュアルも古い。
意思を持つゾンビもかつて、ランドオブザ・デッドでロメロが既に映画化している。
実に、古い。
古いけど、ザックスナイダーが描く、父と娘の和解というテーマで観れば、実はこの映画、むしろドキュメンタリーなのではないか、とすら思えてきた。
最後、娘を護り、散ってゆく父。
ようやく、娘と心がかわせる。
ザック、これを自分でやりたかったんだよね…
そう思うと、この映画は別な意味での涙が出てくる。
娘を亡くし、映画制作から離れたザックスナイダーを長編映画制作に呼び戻したNetflixの功績は大きい。
(おそらく劇中の金庫の中身並みのモノが動いたのであろうが)
ここから、彼なりの贖罪を経て、人の痛みを知る事ができるザックスナイダーの新しい道が始まったと考えれば、映画そのものとしては次第点とはいえ、今作はとても大きな意味があると思い、満点。
ただ、他の方が指摘してる通り、最後のフライト云々のくだりは不要ですね。