「映像化であって映画化ではない」THE FIRST SLAM DUNK ひいろさんの映画レビュー(感想・評価)
映像化であって映画化ではない
スラムダンクど真ん中世代で小学校から今現在まで(コロナ禍を除いて)バスケをやっている身からすると、旧アニメを見ていたときのコートどこまで続くのって思い出や、漫画を読んでいたときの興奮は排除できないわけで。
今回配信で見られるということでやっと見ました。
これはスラムダンクのバスケを表現したいという思いのもとに作られた映像作品であって、スラムダンクという作品の映画化をしたいわけじゃなかったんだな、という感想です。
バスケはかなりリアルに描写されるようになってそこはかなり楽しめました。最後の30秒の攻防は素晴らしかったです。バスケは数秒あれば逆転できる、終了ブザーがなるまでは何が起こるかわからない面白さ、漫画の緊張感をそのままに「映像化」したようで見入ってしまいました。
ただバスケって(というかスポーツ全般だと思いますが)、主観時間と客観時間が結構違うんですよね。プレー中はマッチアップしてる相手との相対で時間を感じるので、自分や味方の動きを遅くも速くも感じたりするんですけど、この映画はすべて客観時間なのが映像的に単調に感じました。客席から撮影したビデオを見てる感覚というのが近いですね。
そしてまさか、スポ根青春漫画にこんなシリアスなエピソードを入れ込むとは。これは思った通り賛否あるみたいですね。
そして人間ドラマがそれ以外ほぼすべて省かれているので、スラムダンクの面白さのほとんどが失われてしまっているのが本当に惜しい。
声優さんの演技もだいぶ抑えた演技指導のようで。「どけミッチー!!」の部分なんて漫画では絶叫しているように思えるけどだいぶあっさりしていて。「返せ…」の部分は激痛を堪えながらも腹の底から絞り出すような声かと思っていたら思った以上に軽い口調で。
全体的にもう少し外連味がある演出でも良かったんじゃないかと思います。
このスラムダンクにZARDのマイフレンドが響き渡るのは似合わないですねえ。個人的にはEDでそれが流れただけで名作になるんですが笑