「アニメとマンガの表現が見事に融合した一作」THE FIRST SLAM DUNK yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメとマンガの表現が見事に融合した一作
『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)は、公開から4年経っても、未だ2次元のマンガ(カートゥーン)とアニメの境界線を越えて新たな表現芸術の地平を拓いた作品として常に参照にされ続けています。本作もまた、数々の評論によって、「スパイダーバースに対する日本アニメーション界の応答」という、優れたアニメ作品に対する一種の決まり文句を冠して評価されています。確かにこの表現を使うしかないほどに、見事なアニメ表現です。その技術力の高さは既に予告編からも窺え、3DCGのアニメーションと比較してシンプルさすらも感じるような絵柄でありながら、音響や所作の描写の細やかさとの絶妙な調和によって、これまで観たことのないようなアニメーション表現を達成しています。まさに井上雄彦のマンガが動き出したら、という想像そのままの世界が広がっており、原作『SLAM DUNK』のファンだろうがそうでなかろうが、何らかの心の揺らめきを感じずにはいられないような作品です。
物語、登場人物については、原作やアニメシリーズのファンであればおなじみの内容ながら、そこに本作独自のある組み替えがなされています。それによって本作は、『SLAM DUNK』という長いドラマの中の、一つの完結した物語として味わうことができます。これは原作者の井上雄彦自身が監督を務めたからこそ可能となった「語り直し」でしょう。原作ファンからの戸惑いや批判もあることを承知しつつ、今年公開されたアニメーション作品としては最高の完成度を持った一作だと感じました。
コメントする