「アニメ王国の実力」THE FIRST SLAM DUNK シューテツさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメ王国の実力
先週観た『冬の旅』が自分の中で予想以上にヘビーだったのか、あれ以降あまり映画を観たいという気持ちが起きない。
こんな時の気分転換に効果があるのが、個人的にはアニメであったりインド映画であったりの純粋な娯楽作品で、今だと『すずめの戸締まり』と本作が候補に挙がり、迷いながら本作を選びました。
しかしながら本作については、既に漫画から興味が離れていた時代(1990年代)の作品であり、存在は知っていましたが全く予備知識なしでの鑑賞となりました。
で、鑑賞後の感想は最高に面白かったです。
以上で本作の感想は終わりですが、鑑賞後色々思ったことも少し書いておきます。
観終わって原作に少し興味が湧き、ネトフリでもテレビアニメ版が配信されていたので最初の数話鑑賞しましたが、こちらは昔のジャンプ風漫画そのままのノリの子供向けテイストでした。恐らくあの調子で100話以上続いてたのでしょう。
当時夢中になって原作やアニメを見ていた人達も、今だともう40代から50代前半という年齢であろうし、再放送を観ていた人達でも30代以上の大人になっているのでしょうから、本作の観客の大半はその年代だと思います。
で、この演出。正直言って昔のアニメとは違う“大人の演出”になっていました。リアル路線でギャグもなく説明台詞もなく、原作は未読ですがテレビアニメとはかなりのギャップを感じられます。しかし、レビュー評価はかなりの高評価なので、この演出がそのまま成長した鑑賞者に概ね受け入れられたという事なのでしょうね。
しかも、本作の監督は原作者の井上雄彦本人がしているので(最近では珍しいかも知れません)、よくある「原作とは違う」等々の作品についての文句は言っても無駄という事になります。
原作者自身が今はこの表現で行きたかったのだから、鑑賞者が文句を言う筋合いではありません。
しかし、ごく一部(どんな高評価作品でも原作モノに必ず一定数いる)「こんなのSLAM DUNKじゃねぇ」的発言があります。昔を懐かしんだり記憶そのものが自分の宝物的感覚も分からないではありませんが、本来は時と共に原作者も鑑賞者も変化するし成長もするという事も考えた方が良いと思いますね。
そういう意味では、全く白紙の状態で今この作品に出合えた幸運を感じました。
私が今年観たアニメは『犬王』と本作で二本だけですが、どちらも素晴らしくて作品の質に於いても世界の人にも観て貰いたいレベルの作品でした。
しかし、こんなにも高品質で面白いアニメを続々作られると、日本の場合逆に実写(エンタメ)映画は益々作り難くなって行くのでしょうね。