「完結」THE FIRST SLAM DUNK U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
完結
複雑、なのである。
原作のファンであり、原作のままの絵が動くだけでかなりの衝撃…いや、まさかこんな日が来ると想像だにしなかった程の衝撃なのだ。
なのだが…原作が好きだからこそ、この作品を楽しめなかったのではないだろうかとも思う。
宮城リョータのオリジナルストーリー…アレが、アレをそのまま受け止めきれない俺がいる。
よもや、山王戦が始まるとは思いもよらず…ファーストって書いてあったし、リョータが主役らしいとの声も漏れ聞こえてくる。てっきり映画用のオリジナルストーリーだとタカをくくっていた。
それが、あの山王戦…原作の最終章、これほどのものは無いくらいのジャイアントキリング、またそこに至るシーソーゲーム、まるまる1話分、ほぼ無音のままに展開されるアノ話…アレもコレもこれ以上は無いって程の再現度と完成度で映し出される。
冒頭、山王戦が始まった頃から、俺は感動しっぱなしで、上演時間の80%は目を潤ませながら見てる。
大好きなんだ。
そこにたどり着けなかったテレビシリーズは未完もいいとこなのだ。
完璧で完成された山王戦…物語のリズムも緩急もアクセントでさえ、愛してやまない。
作中のカットや表情、コマ割り、台詞に至るまで至高の再現度なのだ!
コレだ、コレこそが俺が大好きだった「スラムダンク」の世界観なのだ!
そこに絡んでくるリョータの物語…。
正直、要らんのだ。
妙なとこで腰を折るなと思うのだ。
でも、コレを監督してるのは原作者なわけだ!
敢えて、敢えてあのエピソードを挿入したのだ!
完璧で完成されたと感じていた山王戦を、崩壊させアレをぶち込んできたのだ。…なぜだ?何故だ!?何が足らなかったのですが、何が不十分だったのでしょう?
井上先生!教えてくださいっ!
原作を知らなければ、アノ無音の話に魂の叫びを聞いていなかったならば、脳内に会場が割れんばかりの歓声が響き渡っていなければ、こんな風に感じなかったんではないかと淋しいのだ。
そしてこうも思う。
果たして、この作品だけを見てる観客は楽しめてるのだろうかと?リョータのエピソードを受け止めきれずにいる俺でさえ満足はしている。
それは山王戦に至るまでを補完できてるからだ。
花道の成長を、チーム湘北の戦いを、乗り越えてきた様々なモノを知ってるからだ。
それらが積み重なった先が山王戦であり、桜木のジャンプシュートなのだ…感涙に咽び泣いてるのだ。
その域にまで誘えていたのだろうか?
大きなお世話だとは思うが、もったいなく思う。
この作品に惹かれたら原作を読んでほしいと切に願う。
総合的に判断すれば☆4.0とかが妥当なのかとも思う。物語の展開には興を削がれもするし、主に山王側のキャラの掘り下げも足りてはいない。拮抗するドラマを敵側が背負えずにいるから、どれほどのモノを主人公達が凌駕してきたのかが描ききれずにはいると思う。
時間の制約による取捨選択は致し方がないのだ。
何より主人公が2人になってしまった為に、物語として集約しきれず散漫になってしまっていた。
悩んだ末、それでも☆5.0をつけたのは、原作のままの絵が動くからだ。
その衝撃には太刀打ちできない。
アニメ用のキャラではない。
原作のページをめくる度に目に焼き付いていたコマ割りが、あの表情が、あのスピード感が、アニメという別次元のジャンルで再現するに至ったからである。
だが、最新技術を持ってしても、20年以上前の原作を超えるには至らなかったと記しておこう。
■余談
今作で物議を醸した声優の変更ではあるが、同じ人でなけれなならない理由はないように思う。
むしろ、変な先入観がある分、邪魔になるような気さえする。作品を観ても分かると思うけど、絵が全く違う。そして、おちゃらける部分が全くない。
テレビシリーズの演出上、にぎやかしとして描かれてた部分が一切ないのだ。
もし、声優が一緒であったならと思い返してみたのだが、違和感しかない。声は同じでも顔が全く違うのだ。だからこその一新は必然だったのかもと思う。
惜しむらくは花道と流川の声質が似ていて、キャラの粒だちとしては物足りなかったかもとは思う。
◾️追記 2024/6/18
Netflixで配信が始まったので再度鑑賞
そして…ぶったまげてる。
筋は勿論知っているのだが、初めて見る感覚だ。
前半がほぼ描かれてなかった事に今気づいてる。
勿論、やっぱり感動で咽び泣いてはいるのだが、劇場で見た時は、相当舞い上がってたんだと思われる。
ちゃんとしっかりレビューも書いてるんだけど、今にして思えばただただ感動してたんだなぁと当時を振り返る。
…ガッツリやられてたんだなぁ。