「とても感動した」THE FIRST SLAM DUNK うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
とても感動した
とても感動した。
ひとことで言えないのだけど、何度も読み返した原作漫画を忠実に、いや、パワーアップして追体験させてくれた映画でした。
これを初見で感動できる人は少ないとは思いますが、スラムダンクからバガボンドまで、井上雄彦を追いかけてきたファンにとっては、たまらない完成度でした。
登場人物の一人ひとりにまで焦点を当てて、人間関係や、ストーリーの起伏を追いかけていくことが、映画一本の範囲にはとても収まり切れないという難問を、どう解決するのだろうか?と、そのことばかりが気になっていたのですが、宮城リョータを主人公に据えて、天才・桜木花道を脇に回すことによってストーリーがキレイに展開した。
コミックと映画とでは、表現の幅も、対象の観客も違うということなのだろう。
リョータの生い立ちから、山王工業との対戦に至るまで、これを縦軸に、キャラクターたちの性格や相関関係を横軸にドラマが進展していく。
たまたまワールドカップのサッカーが盛り上がっている時期に公開されたのも、追い風になったようだ。
20年以上、コミックの続きを熱望してきたファンたちへの最高のプレゼントになった。かつて夢中で読みふけった人たちには、ぜひ映画館に足を運んでほしい。
ここからは、ネタバレです。というよりは、マイナスの意見もちょっと書きます。読みたくない人は飛ばしてください。
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単純に、お話の続きが見られると思ったが、やはりそう簡単にはいかないようで、桜木花道の物語は、いったんあそこで途切れたまま、みんなの想像にゆだねられたままなのだろう。とは言え、宮城リョータが唐突に主人公として現れ、三井寿との因縁もちょっと現代風にアレンジしてあり、花道がほとんど活躍しない展開には、不満が残る。
バスケット初心者が驚異的な身体能力とバイタリティーでもって、突き進んでいくさまが痛快で、とっつきにくい印象のスポーツにも親しみが持てるし、ところどころやらかす人間くさい失敗も笑わずにいられない。もともと原作でもリバウンドを獲る特殊能力に光を当てて、ギリギリのリアリティの中で存在を許されてきた主人公だけに、作者としても、ストーリーが進行していくほどに扱いに困っていったのだろうと想像する。
原作に忠実に話が進行するにはするが、花道にもっと光を当ててほしかった。
ほとんどの観客が、エンディングロールにも帰ろうとせずに、おまけ映像を期待していたのもよく分かる。
やっぱり花道の「天才ですから」という決めセリフが聞きたかったはずなのだ。
私はジャンプ本誌で「楓パープル」に惚れ込んだ世代です。それから数年後、スラムダンクの主人公を流川ではなく花道にしてきた事に成合雄彦の非凡さを感じました。今回、花道、流川を脇に据えてエピソードofリョータにしたのも成合雄彦一流の仕掛けだと感じます。
ウソツキかもめさんの、レビュー前半に非常に共感致します。
なればこそ、井上雄彦氏の表現の醍醐味を共に味わおうではありませんか。
奴(井上雄彦)はデビュー作ヒーローを簡単に脇に据えて、違った視点で人間ドラマを魅せる名手なのですから。