「「動く漫画」を実現した「超アニメ」」THE FIRST SLAM DUNK ちゃーはんさんの映画レビュー(感想・評価)
「動く漫画」を実現した「超アニメ」
星5つだが、厳密にいうと、4.9くらい。
とにかくすごい。それ以外の言葉が見つからないくらい。でも、それだけだと何も伝えられないので、無理やり言葉にしてみる。
まず、試合の映像表現。おそらくモーションキャプチャを駆使して、本物、リアルな映像を実現している。コートのサイズ感も自然。コート上の10人が「生きていた。」スポーツ漫画やスポーツアニメにありがちな、そんな一瞬で長文の台詞言える間があるわけないじゃんっていう違和感がない。本物の試合を審判くらい近いカメラ位置から見ているような感覚になる。余計な台詞や感情を入れていないところがプレイヤーたちの試合への没入を表している。
今後、スポーツアニメは、すべてこの形になっていくのではないだろうか。本来、アニメって本物というか実写では表現できないことを絵や動画で表現していたわけだが、それすらを超えたというか、すり抜けたというか、上回ったというか。絵でありながら、実写のような、実写でありながら、絵のような。2019年公開のライオンキングが本来のアニメ映画から「超実写」と謳われていたが、本作は「超アニメ」といっていいのではないか。本来の意味で、「漫画が本物のように動く」「絵がそこに在るように動く」感じがした。
ぼくはテレビアニメを小学生の時にリアルタイムで見ていて、「前の声優がーー、、」と言っていたが、声優もはっきり言って、ほぼ気にならない。全く気にならないかと言われたら、ぼくはほんの少しだけ気になる部分はあった。それもきっと慣れたら気にならなくなるレベルだとは思う。
このあたりからは、ネタバレではないが、映画を観ていない人は読まない方がいいかも。
この最高の映画に対するぼくなりのマイナス0.1は、原作を読み過ぎているからこそ生まれたものであるような気がする。ぼくの中では、今まで読んだスポーツ漫画の中で、最高の対戦は、スラムダンクのこの湘北vs山王工業だ。きっとドラマ部分を無くしてこの試合を俯瞰して観たとしても、最高の試合だと言い切ることができる。だが、本作は、試合の力よりもドラマ部分の感動が勝ってしまった。それはもちろん素晴らしいことではあるけど、原作ファンからすると、もう少し、純粋に「試合」で感動したかった。「2時間の映画」としては最高だったと思うが、個人的には、もっと「桜木花道」を感じつつ、試合で断固感動したかった。
作画に3DCGを採用したことで、立体になったのは、映画だけではなかった。登場人物の背景、歴史、人間性までも立体となり、照らす位置や角度を変えると、こうも鮮やかに光り輝くのかと。いつか安西先生が原作で言っていた。「うちには主役になれる選手がたくさんいる。」あれはこういう意味だったのか。