「心をえぐるような涙が痛くて痛くて、、、つらい。」少年の君 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)
心をえぐるような涙が痛くて痛くて、、、つらい。
素晴らしかったです。BEST級でした。
エンドロールでハッと・・・「あ、そっか、そういうテーマが根底にあったんだよな、、、」って思い出したぐらいに、主人公二人の行く末をひたすらにひたすらに案じて止まない2時間強だったのです。ズレた歯車が奏でる哀しみの音に心乱されながら。
本作は「いじめ」が元で人生が狂っていく若者達を背景とし、孤独を持ち寄る男女の切ない物語を紡いでいきます。ですがその二人の物語が予想の斜め上をいってまして、まさかまさかの展開だったのです。衝撃走りましたよ。それは突拍子もない展開でもなんでもなくて、説得力半端ないです。あぁ、そうなっちゃうよな・・・そうだよな、それしか・・・あぁ、、やっぱり・・・。みたいに。この説得力は作本全体にある「現実味」がもたらしているのだと思います。
いじめ問題、学校の人間関係、家庭問題、受験戦争、経済格差、などがこれでもかと描かれています。それもぼかすことなくしっかりと描いています。中国内の顕在化している状況なのだとは思いますが、日本を含めどこにでもあるのでしょうね、ヒリヒリするんです。そんな社会から置いていかれないように食い下がる二人の心が寄り添っていく様が人間の強さのように見えます。一人では潰れちゃいそうだけど、誰か支えてくれる、支える力をくれる誰かがいれば、生きていけるんだと。
この二人の関係性の描き方が素晴らしいんですね。微妙な気持ちの動きを、丁寧に丁寧に映し出します。ちょっとした言葉、ちょっとした行動に二人の心情が伝わってくるのです。あぁ、でもなぁこの出会いって望まれた出会いなのだろうかなぁ?出会ってなくてもいい関係だったりするよなぁ・・なんてことを思いながら見てました。
そんな二人を見事に演じている演者さんあっての作品ですね。とにかく女優チョウ・ドンユイさんが素晴らしすぎます。この方の演技の幅と深さたるや・・・ワールドクラスではないでしょうか?こんなにも画面いっぱいに広がる表情で雄弁に語れる女優さん、なかなかいないのではないでしょうか?
そして結末に向けて、ただただ感情が揺さぶられます。頼む、頼むから彼らに笑顔を!頼むーーー!って願いながらの鑑賞です。辛かったなぁ・・・。もう道路が分かれていくあのシーン、、、たまらんです。そしてラスト・・・あのシーンは、ちょっと解釈分かれるかもしれません。僕は願いたいですね。
余談ですが・・・本作は東野圭吾さん作品からの盗作疑惑があるそうですね。観賞後に知りました。僕は盗作元と言われている作品を見ても読んでもいなかったので、本作の物語は何の影響もなく楽しめました。しかし、知っている方にとっては「冷める」のかもしれませんね。ただ、チョウ・ドンユイさんの演技、、デレク・ツァン監督の演出は見る価値は大いにあると思います。
傑作です。