「今年最高の一本の予感」レッド・スネイク トラヴィスさんの映画レビュー(感想・評価)
今年最高の一本の予感
素晴らしかったです!
ポスターからアクション映画と思われそうですが、銃撃戦以上に宗教や戦争に翻弄される一人の女性の生き様を丁寧に描いた実話ベースの人間ドラマです。
主人公はISIS(イスラム過激派)によって目の前で父親を殺されたヤジディ教徒の女性ザラ19歳。彼女が戦士として立ち上がり引き離された弟を探すドラマです。
個人的に人間同士が殺し合う戦争に大義などないと考えていましてが、本作の女性による特殊部隊の活動を観て考えが変わりました。
異教徒を容赦なく殺しまくるISISを一掃すべきと考えるのは必要な行動だと思えました。国益の為に戦争を仕掛け民間人を何万人も犠牲にしている米も本来なら責められるべきかもしれません。
教養のない自分はいつも思います。そもそも神の存在が争いを生む原因なのではと。
作品の中でも描かれていましたが善悪の判断がつかない子供を洗脳して自爆テロをさせると聞いたこともあります。戦う意味も分からぬまま犠牲になる人も。
日本人の自分達にとって戦争は対岸の火事です。実際戦争の犠牲になっている人々の苦しみなど全く理解出来ないでしょう。
広島出身の自分は小学生の6年間8月6日の登校日に原爆の映画を観せられました。とても凄惨でリアルな原爆の映画はトラウマになりました。だからこそ戦争に対する絶対的な嫌悪感があり、その経験に感謝しています。
本作を観ていて感じたのは生命に対する重さや価値観の圧倒的な違いです。こんなにも容易く蹂躙され失われるのかと改めて考えさせられました。
そんな中、自分の命をかけてISISに立ち向かう彼女たちの勇姿は、個人的にはあまり好きではない言葉ですが『正義』だと思えました。作品の描き方もあるので一概には言えませんが。
平和と思える日本でも国連から非難されるほどの人権侵害が入国管理局で行われていたり、希望を抱いて来日した技能実習生が奴隷のように扱われ100人以上死んでいたり戦争とは異なる犠牲者を出し続けている事実。安い労働力としての外国人は受け入れても難民は頑なに受け入れない。五輪開催に相応しい国とは到底思えません。