「恐るべき憎悪と侮蔑」レッド・スネイク Uさんさんの映画レビュー(感想・評価)
恐るべき憎悪と侮蔑
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前半は男たちに恐れられる女性特殊部隊の暴れっぷりと、父を殺され家族と引き裂かれ将校に乱暴される娘の悲惨な物語が、重ね合わせで描写される。この同時進行が意外に新鮮。
援軍の空爆も利用して、他勢に少人数で果敢に向かっていく女性部隊は、同じ対IS戦をテーマにした総力戦のアウトポストなどとはまた違う緊迫感があった。故に作品的にはもう少し細かく見たかった。
女性兵士たちの生活や行軍・戦闘は主軸として描写されるが、その中で、主人公と見做されるザラが、戦い慣れたレッドスネークに変貌していく姿は、実は明確には描かれていない。そうか。キャッチの「私は彼女たちと共に戦う」の「私」は特殊部隊のメンバー一人一人のことを指していたのだ。これは戦場で命運を共にするシスターフッドの物語だったのだと思えば、それはそれで納得できる。
ラストシーンで、自分たちの独立は正式には認証されなかったと悲しく笑うリーダー格の男女の姿によって、民族戦争の救い難く困難な未来が伝わってくる。結局、勝者もひとときの安堵の後、また次の戦争の荒野に放り出される。
さて。
実は堪らなく不気味な感覚が残る。市街地を巡回していたISの街宣車がつぶやいた「死後1日経った死体とは交わるな」とは何? 「1日」の部分は聞き間違いかも知れないけれど、このようなそら恐ろしい警句が本当にあるのだろうか。
女性に殺されると天国で天使と交われないと信じて、女性部隊を恐れていると言うのはこの作品の一つのテーマになっているし、是非は別にして、ISへの憎悪に加え、強烈な侮蔑も盛り込まれた作品。
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