劇場公開日 2021年7月24日

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「彼はわかってたのよ、時間が必要だって。時間を借りて知らせてくれた。」夕霧花園 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5彼はわかってたのよ、時間が必要だって。時間を借りて知らせてくれた。

2021年10月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

戦時中のスパイの嫌疑をかけられた日本人造園師。姿をくらました彼と過ごした過去を持つ女性裁判官が、真実を探りながら、淡い恋の回想をしていく。ただのラブストーリーではなく、ちょっとしたミステリー。
最後の謎解きが明かされて、彼の失踪の訳がリンクしたときに、彼女は強く感情を揺り動かされる。その気持ちは痛いほど伝わってきた。彼が、そうした気持ちも。信用してなかったんじゃなく、巻き込みたくなかったんだってことを。

人は、目の前の現象を見てそのことだけがすべてだと思い込む。そこに隠されているもの、あるのに見えないもの、何かに紛れているもの、何かにミスリードされて忘れてしまっているもの。それに気づいたとき、彼、中村有朋の「外の風景はつねにそこにある。私たちが選べるのは、どう見るかだけ。」と言うセリフがすっと腑に落ちてきた。

監督は台湾人か。なるほど、画面から滲む湿気のある風景は、台湾映画を観るときによく感じてきたなあ。

栗太郎