「アタシより普通のOLに会いに行く!」地獄の花園 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
アタシより普通のOLに会いに行く!
ヤンキー漫画あるある。
ケンカ上等。ケンカに明け暮れ、激しい派閥争い。
少年バトル漫画あるある。
強ェ奴が現れる。その強ェ奴と戦い、自身も強くなっていく。
OLの仕事。
書類のFAX、コピー、整理、パソコンワークス、電話対応。休憩時間に同僚とコーヒー飲みながら他愛ないお喋り。ランチや仕事が早く終わったらディナーを楽しむ。彼氏も欲しい~!
ヤンキー漫画とバトル漫画は似通ってるけど、OLの世界は全然別…。
…んなこたぁない!
バカリズムの手に掛かれば、面白可笑しく楽しく、ブッ飛びのOLバトルロワイアル・エンターテイメントとして“フュージョン”!
一般企業・三富士株式会社で働く平凡なOL、直子。
一見何処にでもある会社で、直子たちも普通のOLライフを送っているが、
実は、その裏では…
ヤンキーOLたちによる壮絶な派閥争いが繰り広げられていた…!
狂犬!
大怪獣!
悪魔!
この3つの勢力。
あ、ちゃんと人間=OLです。
狂犬紫織vs大怪獣悦子vs悪魔の朱里! 激しい争いの末、制したのは朱里。
その頃直子は普通のOLライフ。“こちら側”と“あちら側”となってるけど、何で社内であんな激しい争いが繰り広げられているのに誰も平常通り?…なんて愚問。何故なら、漫画映画。
ある日、中途採用で入社してきた蘭。
結構態度がデカい。
早速先輩たちから可愛がられ…と思ったら、これをザコ程度に。それどころか、紫織、悦子、朱里までも倒し、社内の派閥争いをあっさり制圧。
蘭はケンカなら誰にも負けねェ!…な強者ヤンキーだった。
突如現れた奴が実は強かった! 強ェ奴を倒す。テッペンに立つ。
ヤンキー漫画やバトル漫画のあるある。
その頃直子は…
ふとしたきっかけで蘭と友達に。
ケンカは強いけど、仕事力はまあまあの蘭。色々教えてあげる。
ランチしたり、休日遊んだり、ヤンキーOLもこの時ばかりは普通の女の子。
蘭の強さを聞きつけ、他社から標的になる。
リアルな会社設定で言うと、売り上げのいい伸びしろのある会社を大会社が狙うみたいなもの…?
蘭は次々撃破していくが、遂に立ちはだかったのは一部上場企業トムスン。直子を誘拐するという姑息な手段に…!
アタシ、主人公の足を引っ張る脇役じゃん!
直子を救出する為、蘭は一人トムスンへ。
どっからどう見てもおっさんにしか見えない“魔王”と呼ばれるお局OL・涼子と配下のOL・三銃士が待ち構え、よくある一人一人と対決。
「すぐ助けてやる!」
主人公はカッコいい!
が! 三銃士最後の一人でまさかの敗北…。魔王に届かず…。
嘘でしょ!? 主人公じゃないの!?
絶体絶命。
会社も、蘭も、私の運命も…。
…いや。
仕方ない。
真の自分を目醒めさせる時が来た。
突然、直子の身体に力がみなぎる。
蘭を倒した三銃士をいとも簡単に。
それだけじゃなく、魔王すら赤子の手をひねるかのように。
今までのピンチが冗談のように脱した。
幼い頃、同年代の女の子たちが少女漫画を読んでいた頃、地元最強ヤンキーの兄たちの影響でヤンキー漫画ばかり読んでいた直子。
その遺伝かどうなのか知らないが、父からは兄弟妹最強と言われ続けた。別に嬉しくもないのに…。
つまり、強さに興味無いのに、生まれながらのケンカDNA最強。
「お前、何者だ?」
「普通のOLだよ」
なんて言ってたけれど、
そう、彼女は…
スーパーOL、田中直子だ!
そんな事を隠しに隠して平凡で普通のOLとして生活してきた直子。それが望みで、誰にも知られたくなかったから。
今回の事も蘭がトムスンを潰した事に。
が、あれ以来蘭は出社せず、姿を消した。一体、何処に…?
そんなある日、トムスンがリベンジ。しかも、“地上最強のOL”と言われる鬼丸を伴って。
頭を出せ!
頭は今居ない。
朱里たちが言ってる頭とは蘭の事。
トムスンが言ってる頭とは直子の事。
直子が頭? 何言ってんだ、テメェ? アタシらで充分だぜ!
が、狂犬×大怪獣×悪魔の3人掛かりでもトムスンには手も足も出ない。
今までは“あちら側”と“こちら側”だったけど、蘭がやって来て、皆友達に。
その友達が…。
遂に“真の主人公”が立ち上がる…!
トムスンOL、三銃士、魔王を軽々と倒す直子。
その次元違いの強さ、例えるなら“漫画のような強さ”に朱里らはポッカ~ン…。
いよいよ敵ボス登場。フ○ーザ様のように余裕たっぷり、お喋り延々。
確かに強い。無敵の強さを誇った直子も苦戦。
バトル漫画あるあるだと、戦いの中で、更なる力が覚醒。直子も然り。
次第に互角になり、鬼丸を押し始める。
両者の激闘。朱里らはもう、漫画を見てるみたい…。
そして遂に鬼丸を倒した直子。それは彼女が“地上最強のOL”になった瞬間でもある。
割りとあっさりとやられた感のある鬼丸。本当にラスボス…? これで終わり…?
いや、まだ。
蘭は…?
ありえねー!バカバカしいー!
全てがツッコミ所満載。
そう割り切って見る作品。
でも、
ヤンキー漫画×バトル漫画あるあるの興奮アクション、OLあるあるの笑い、さらには友情のドラマ。
これらを合わせたバカリズムのオリジナル脚本が、ここまで来るともう何をハチャメチャやっても許せちゃう?!
お笑いでのシュールなネタや世界観。この人の頭の中はどうなってるの…??
キャスティングの妙。
菜々緒と大島美幸は分かる。
川栄李奈はドラマでヤンキーやってらしいから分かる。
広瀬アリスも演じてみると様になってた。
しかしまあ、可愛い顔&細い腕の永野芽郁に最強OL役とは…。
ハードなアクションも見せ、熱演。彼女のキュートさと“最強っぷり”は一粒で二つ美味しい!
でも一番の“最強キャスティング”は、遠藤憲一、勝村政信、松尾論、丸山智己だろう。だって、まさかまさかのOL役!
平和な日常、OLライフが戻った。
そんなある日、直子の前に、突然蘭が姿を現した。並々ならぬ様子で。
お馴染み回想の始まり~。
トムスンで倒された時、意識を取り戻した蘭。そして見てしまったのだ。直子の強さを。
助ける筈だった相手に助けられた。こんな恥ずかしい事はない。
いや、それどころか、自分にはケンカしか取り柄が無かったのに、自分が一番じゃなかった。
何もかも虚しい…。
しかもその一番は、思わぬ奴だった。今まで可愛い猫を被っていたのか…?
悔しい…寧ろ、怒りや憎しみすら沸いてきた。
でも悲しいかな、今の自分ではアイツには勝てない。
ここで、そう、バトル漫画あるある。
蘭は“伝説”の“最初のOL”の元へ。
修行。戦い。のみならず、OLの仕事まで。
蘭は強い。が、粗も多い。それは品が無いから。仕事が出来ないのもその理由。仕事で品あり、無駄な動き無くしてこそ、真のOLに…って、本当?? …って、そんなツッコミは愚問。
厳しい修行を経て、極意を叩き込み、蘭は倒すべき相手の前に…!
蘭からすれば、直子は倒さなければならないラスボス。
強者だったが、挫折を経験し、再び立ち上がってきた王道主人公。
私がラスボス~!? 最初は主人公の隣にいる“脇役”。でも実は、並ぶ者の居ない最強主人公。
己の拳とプライドと譲れないものを懸けて。
地上最強のOLは…!?
いざ、勝負!
修行を経た蘭は直子と互角。
戦いながら、かつて仲良く過ごした日々が脳裏に過る。
拳と友情がぶつかる。
“好敵手”であり、“友達”。
だからこそ、戦う。
戦わなければならない。
戦いに勝ち、“地上最強のOL”となったのは…。
しかしその直後、思わぬ出来事。えっ、いつの間に…?
“普通のOL”だったのは…。
確かにあれは“完敗!”だね(笑)