劇場公開日 2021年4月23日

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「サクッと見られるが意外と奥深い」スプリー 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5サクッと見られるが意外と奥深い

2021年4月28日
PCから投稿

徹頭徹尾、独特なノリと感性に彩られた作品だ。全てのシーンを自撮りや固定カメラなどで記録した映像、さらにはリアルタイムで交わされるチャット画面にて完結させながら、いっさいの展開上の緩みや齟齬が見当たらない。主人公がかなりサイコパスへ振り切れようとも観客が興味を失わないのは、こういった作り手の技術やセンスがうまく機能しているからなのだろう。一方、ストーリーはというと、車で人をさらうという「ヒッチャー」を思わせる内容。かと思えば、序盤から人気者への”憧れ”がじわじわ”執着”へ変わるスコセッシの「キング・オブ・コメディ」的なテーマ性が際立つ。憧憬の対象がなぜかコメディアンという点でも両作は共通しており、さらにこの移動する舞台ともいうべき乗合サービスがすなわちタクシーの現代版である点も含め(「タクシー・ドライバー」)、作り手のこだわりを読み解くにはスコセッシ作品との比較検証が不可欠に思えてならない。

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牛津厚信