「クリスマスの3日間のダイアナ妃の心の葛藤」スペンサー ダイアナの決意 haginoさんの映画レビュー(感想・評価)
クリスマスの3日間のダイアナ妃の心の葛藤
オープニング、草原の向こうに見える夕日。
よくよく見るとそこに通る何台もの車。
そして、ダイアナがひとりで車を運転するシーン。
木々の延々とつづく草原。
一本道のようだが、迷ったとフィッシュ&チップスの店に飛び込む彼女。ざわめくお客さんたち。
ピアノの落ち着いた曲が流れていて、この時ばかりは彼女は自由だった。
しかし、エリザベス女王の私邸サンドリンガム・ハウスに近づくに連れ、音楽も不穏になっていく。
軍用車みたいなのが数台邸の前に止まり、兵士っぽい人たちが10人ほど降りてきて、大きなトランクカーゴのようなものを運び入れる。
そして、その兵士たちとすれ違いにシェフが10人ほど邸に入っていく。そのトランクカーゴのようなものには食材が入っていた。
なーんだと思ったが、このシーンで不穏さがいっきに増した。
ダイアナは途中、生家のカカシを見つけて、そこまで走り、昔自分が着せたという父のジャケットを剥ぎ取る。
亡き父にすがるかのように。
女王より遅く着いては行けない、と分かっていても、心が拒否する。夫の不倫、贈られたネックレスは彼女に贈ったものと同じもの。
自分の安らげる居場所は2人の息子とマギーのみ。
3日間で朝食、礼拝、夕食など着る服も決められて、パパラッチやら家のものやらにずっと見張られているようで息が詰まる。
そして、部屋にあった、ヘンリー8世の妻だったアン、ブーリンの本に思いを馳せる。彼女は最初の王妃キャサリンの従者だったが、見初められて王妃となる。しかし不義の罪で斬首されてしまった。
先月に舞台「ヘンリー8世」を見たばかりだったので、とても身近に感じられた。
過食症を患っていた彼女は、ディナーで周りの視線のストレスからネックレスを引きちぎり、そこにこぼれた真珠をスープとともに呑み込む。もちろんこれは妄想の中だが、そこまで精神が病んでいたということなのだろう。
そんな母を気遣う息子たちもいじらしいです。
パパラッチからの盗撮を避けるために、開けられないように縫われたカーテンを切るシーンも大胆。自由に外も見れないなんて鬱にもなりますよね、、
夜、禁止されていた生家に忍び、そこにアンの面影を見る。そして思い浮かぶ過去の自分。好きな服を着て、好きなように踊る、バレリーナを夢見たが身長が高くて諦めたというエピソードも込めているのだろうか。
1番の理解者であるマギーに告白され戸惑いながらも、海ではしゃぐシーンも印象的。(パパラッチはいいのか?とも思いつつ、、)
狩猟のためだけに育てられたというキジがかわいそうだといい、息子が嫌いな狩猟をさせられていることをなんとかやめさせようとしたり、とても心優しい一面もあった。最後は狩猟場に出ていき、息子を返してもらうと、荷物をまとめて車を飛ばして、音楽をガンガン流しながら、最後はケンタッキーでチキンを食べるという、王妃ではなく、全てから解放されて自由になり、母として生きる決意をした生き方はかっこいいなあと思った。
そして何より、クリステン・スチュワートの細かな表情がとても良かった。そして美しかった。