「彼の置かれた立場は理解できるが、もう一段深い因果がないと、主人公の行動は理解しづらい」お隣さんはヒトラー? Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
彼の置かれた立場は理解できるが、もう一段深い因果がないと、主人公の行動は理解しづらい
2024.7.27 字幕 MOVIX京都
2022年のイスラエル&ポーランド合作の映画(96分、G)
ヒトラーそっくりの隣人の正体を暴こうとするホロコーストの生き残り老人を描いたスリラー映画
監督はレオン・プルドフスキー
脚本はレオン・プルドフスキー&ドミトリー・マリンスキー
原題は『My Neighbor Adolf』で「私の隣人はアドルフ」という意味
物語は、1930年代の東欧にて幸せに暮らすポーランド系のポリスキー一家を描き、その後は1960年の南米へと舞台を移していく
ホロコーストにて自分以外の家族を失ったマレク・ポリスキー(デビッド・ヘイマン、若年期:Jan Szugajew)は、妻リリー(Maria Juzwin)が愛した黒バラを育てるのを唯一の楽しみにしていた
ある日、彼の元にヘルマン・ヘルツォーク(ウド・キア)の代理人と称するカンテンブルナー夫人(オリビア・シルハビ)が訪れ、隣家のことを尋ねに来た
マレクは関わりを持ちたくなく不愛想に接するものの、それが却って裏目に出てしまう
隣家との間にある柵の位置がおかしいと主張され、黒バラが育っていた場所は隣家の敷地だと言われてしまう
物語は、得体の知れない隣人と過ごすことになったマレクが敵意をむき出しにして接するものの、ある日の出来事を境に恐怖に慄くことになってしまう
それは、いつもサングラスをしている隣人の素顔が「かつてチェス大会で目撃したヒトラーそっくりだった」のである
マレクはイスラエル大使館に出向き、そこにいた諜報員(キネレト・ヘレド)に訴える
だが、ヒトラーはすでに自殺していると言われ、マレクは躍起になって、隣人がヒトラーであることを示そうと考えるのである
映画は、視点の変わったヒトラー映画で、南米に逃亡した説を基に作られている
後半にはあっと驚くとまではいかない真実が暴露されるのだが、それに対してマレクが感情移入をするのは少し違うなあと思ってしまった
隣人が置かれた立場と、家族に降りかかった悲劇はイコールなどではないので、彼があの行動に出てしまうのは微妙な感じに思えた
いずれにせよ、面白い試みで、緊張感のある内容なので楽しめるのだが、もう一段キツいオチを用意しても良かった
復讐をすれば心が晴れるとは思えないが、いまだに庇護にあって逃亡生活を送っているあたりが感情移入しづらい部分かも知れない
隣人が完全に関係が切れて、逆にネオナチなどに狙われているのなら話は変わると思うが、そこまで踏み込まなかったのは微妙かなあと思った