アウシュヴィッツ・レポートのレビュー・感想・評価
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生き延びるためではなく、伝えるため
映画は、一般的には娯楽なのだろうと思う。そういう視点で言えば、この作品は間違いなく、一般的な映画ではない。
そこに描かれるのは、アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所のリアル。
今まで映画などで描かれてきた強制収容所とは明らかに異なる。囚人と呼ばれる収容者や、誰かほかの主人公、そういった存在の主観も、感情も入り込まない。そこには、効果音や同じ役割を担う音楽もない、まるでドキュメンタリーのように、そこに起きていただろう現実が展開していく。
全編を通して、非常に重苦しく、心に重りのようにのしかかってくる。
それでも、観たことを後悔させない作品でもある。
エンドロールで流れる音声が、まだ続く悲劇に気づかせる。ホロコースト自体は過去になったかもしれない、けれど、過去が繰り返される危険性はまだまだ潜んでいると訴えかけてくる。
イントロダクションの言葉が、エンドロールとともに、ずしんと再び頭に刻まれる。
「過去を覚えていない人は、過去を繰り返す運命にある」
【"過去の過ちから学ばないモノは、滅びる。" 死の連帯責任の犠牲を払って二人が告発した事・・。苦い思いと虚しさ及びエンドロールで流れる現代の愚かしき政治家の肉声に暗澹たる気持ちになった作品。】
- アウシュヴィッツから生死を掛けた脱出をした二人の意図はしっかりと伝えられていたのか?-
◼️感想
・苦い思いが、込み上げる映画である。
同胞の”死の連帯責任”の犠牲の下、アウシュヴィッツの真実を伝えようとした二人の思いは、本当に連合国に伝わっていたのか?
(二人の命を懸けた行為が、多数の犠牲の元に果たされた所業故に、尚更、苦き思いが残るのである。)
ドイツの赤十字は機能していたのか?
- 結局、アウシュヴィッツは空爆されなかった・・。
劇中でも描かれるが、二人が告発書を赤十字に提出した後も、何万人のユダヤ人の無辜なる命は、狂信的なナチスに奪われたのか・・。-
・極寒のアウシュヴィッツで殺される人達の姿をロングショットや俯瞰で写し出す事で、ナチスの冷酷さを強調する手法が、悲しいが、効果的に、観る側に恐怖を伝えている。
・自分の息子が戦死した事に怒り、罪なきユダヤ人たちに行ったライスマンの狂気の所業の数々・・。背筋が寒くなる・・。
◆ユダヤ人たちが、ナチスの所業を絶対に許さないのは、ガス室で殺したユダヤ人たちの死体を”ゾンダーコマンド”と呼ばれていたユダヤ人たちに処理させていた事も、一因である。
今作では、二人の告発書は一部しか機能しなかったが、アウシュビッツのゾンダーコマンダーたちは、密かに漸く入手した紙にナチスの所業を記し、地中深く埋めていた。
後年、その幾つかが発見され、SSもしくはナチの要職に就いていた者は、フランクフルト・アウシュビッツ裁判により、ドイツ人達から重き裁きを受けたのである・・。
<エンドロールで流れる愚かしき現代の政治家達の声、不寛容な思想を持つ者達の声を聞き、非常に恐ろしく感じた映画である。
毎年、夏になれば、日本でも過去の歴史を反省する映画が上映されるのに、今年は上映されない。何故だろう・・。
右傾化していく日本に危惧を抱いている。>
娯楽作品ではないが見るべき映画
前半は過酷な収容所。中盤は二人の脱走者の過酷な運命。ラストは二人の報告書の作成とその後の経過。
登場人物一人一人の鬼気迫る演技は心が震えます。
歴史は変えられない。
しかし歴史から学ぶことはできる。
過去を忘れる者は同じ過ちを繰り返す
アウシュビッツ収容所から脱走したユダヤ人が命懸けでナチスドイツの残虐行為をレポートにし世界に知らせようとした話し。
この脱走した1人が死体の記録係を強制任務されていた事もありよりレポートに信憑性を帯び出版後も世界の人々の心を動かす事となった。
冒頭に「過去を忘れる者は同じ過ちを繰り返す」というメッセージから始まる。
この作品の主となるユダヤ人への残虐行為はもちろん今はゼロになったと信ているが、形は変えて今でも多数の差別は世界中に存在している。そんなヘイトスピーチのいくつかの例がエンドロールで流されておりまだまだ差別は根絶できていない現実、そしてそれらが存在するのは過去の残虐な出来事を他人事として認識し、人類の過ちを自分自身に置き換えて省みてない事がまだまだ差別が残る原因の一つではないのかというメッセージが送られていた。
作品としてはセリフの少なさや暗い描写が続くため未熟ながら少し分かりづらいシーンが続いてしまった。
ただ今作の様に過去の残虐な出来事を風化せず映画を通して忘れずに思い出しそして改めて人類の恥ずべき過去として省みる事の大切さを改めて実感させられる作品であった。
エンドクレジットが全てを物語る
アウシュヴィッツを脱走した2人のユダヤ人がまとめたレポートが、ハンガリー系ユダヤ人の命を救った…その行為はもちろん称賛に値する。
しかし、ポーランドやフランスといった他国のユダヤ人は変わらずアウシュヴィッツに移送され続けた。もっと伝わるべき情報が全てに行き渡らなかった悲しさとやるせなさ。これは、伝えるべきニュースがいつの間にかフェイクニュースに取って替わられてしまう現代にも通じるかも。
冒頭の首吊りシーンやクライマックスのワンカット長回しシーンなど、印象に残る場面は多々あるが、一番強烈だったのはエンドクレジット。
上映開始早々に提示される、哲学者で詩人のジョージ・サンタヤナの言葉「過去を忘れる者は、必ず同じ過ちを繰り返す」が意味するものが、ここでようやく分かる。
戦後75年以上経つのに、人類は過去から何も学んでいない――監督の痛烈なメッセージだ。
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