「科学の二面性に迫る、20年の集大成」科捜研の女 劇場版 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
科学の二面性に迫る、20年の集大成
通常スクリーンで鑑賞。
ノベライズは既読。
シーズン20の最終話で本作の製作が発表された時歓声を上げた。シリーズ20周年の節目での映画化である。ようやくこの時が来たと云う感じで、子供の頃から「科捜研の女」が好きで観ていた私にとってこれほど喜ばしいことは無かった。
大スクリーンで展開される榊マリコをはじめとした科捜研での鑑定シーンなどのお馴染みの場面や、映画館ならではの音響で聴く「科捜研のテーマ」は格別の味わいと迫力があり、感無量だった。これぞ、劇場版の醍醐味だと胸がいっぱいだ。
歴代のレギュラー・キャラクターが総登場しアベンジャーズ状態。マリコの暴走具合も相変わらずで、20年間の人脈を駆使した総力戦はとてつもない高揚感をもたらしてくれた。
ドモマリの関係性に、シーズン3以来の再登場となったマリコの元旦那が波紋を投げ掛け、秋からスタートするシーズン21でも継続する模様。果たしてどうなるか、楽しみだ。
劇場版だからと大掛かりなアクション・シーンや迫力のスペクタクルがあるわけではない。悪く言えばいつも通り。だがこの「いつも通り」が20年掛けて築いた世界観なのだ。
それを映画だからと崩してしまう必要は無い。では映画でなくても良いのではないかと云うと、そうではない。そう思わせるほどに、扱われていたテーマが重厚だったからだ。
雑に扱えないテーマだからこそ、「ながら観」を出来てしまうテレビより、観客にじっくりと鑑賞してもらえる映画と云う媒体にした意味があるのではないかと感じた。
マリコと加賀野の対決に象徴されているように、人類の進歩に不可欠でありながら、その逆も齎してしまう科学の二面性に迫り、実証に必要な証拠提示の難しさを描いていた。
それは、トリック解明のプロセスが、新型コロナウイルスのワクチン接種と、副作用と考えられる事象の因果関係の科学的判別の難しさを暗喩していることから容易に察せられる。
こんなにタイムリーな題材を、このような絶妙且つ微妙なタイミングで、しかもシリーズ集大成となる劇場版で扱おうと決断した製作陣の情熱と勇気に心からの賛辞を。科学を真摯に描いて来たシリーズだからこその迫真性があったように思う。
秋の京都の美しさを捉えた見事なカメラ・ワークも見逃せない。ドローンでの撮影を多用していたり、スクリーン映えする素晴らしいシーンばかりだった。観光映画的で、旅行に行きにくいご時世だが、鑑賞後には京都に行った気になれたし、コロナ禍が落ち着いた暁には秋の京都へ行ってみたくなった。
[余談]
マリコさんの母親役で出演していた故・星由里子さんを、流用映像なのだろうけれども登場させてくれたことに、製作陣の愛を感じて涙がこぼれた。これで本当の全員集合である。
[以降の鑑賞記録]
2022/02/12:Blu-ray
2024/07/28:Blu-ray
※修正(2024/07/28)