劇場公開日 2021年4月17日

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「言葉の強さ」ヒロシマへの誓い サーロー節子とともに Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0言葉の強さ

2021年4月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「爆弾は持って良いが、核兵器はダメだ」というのは、究極的には偽善だろう。
また、アメリカへの軍事依存から脱却する場合(そうすべきだ)、今の日本の地政学的状況で、一方的に「核保有しない」という選択肢はありえるのか?

しかし、「核兵器禁止条約の前文」にあるように、「偶発や誤算あるいは意図に基づく核兵器の爆発を含め、核兵器が存在し続けることで生じる危険性」は、いかんともしがたい。
この映画を観ながら、核廃絶は「理想」でなく、実は逆に「何が一番現実的なのか」という問題なのだなと、視点を変えさせられた。

節子さんの語る言葉は強い。
小賢しい「核による防衛論」などは、一撃で粉砕するほどの力に満ちている。
長年にわたる活動を通して、練りに練られたであろうレトリック。おとなしい証言者でなく、戦略を持って闘う人だ。
そのレトリックが、多くの親戚や知人を失った“サバイバー”としての真心と一体となって、聴く者の臓腑をえぐる。
“溶けて炭化した”人々への思い。甥の死を語るシーンは、涙なしでは観れなかった。

ノーベル賞受賞で見事な“オチ”がついたが、節子さんと竹内家のエピソードとの親和性は高いとは言えず、ドキュメンタリーとしての出来は高いとは言えないかもしれない。
しかし、節子さんの歯に衣着せぬ言葉を、マスメディアによる“フィルター”をかけることなく、ストレートに聞くことができて良かった。

Imperator