「This is a beginning of the end of nuclear weapons.」ヒロシマへの誓い サーロー節子とともに kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
This is a beginning of the end of nuclear weapons.
始まったばかり。広島に原爆が投下されて75年が経った。広島平和記念式典では安倍総理の内容の薄い淡々とした式辞が述べられていた。わざわざ「核兵器禁止条約に批准するには時期尚早である」と言い訳がましいことを語ってた。いや、なぜ日本政府は批准しないのだ?世界で唯一の被爆国であるというのに。日本が参加することが最も効果的だというのに。もう言い訳は聞きたくない。核兵器の抑止力だとか、核の傘にあるだとかは関係ない。原爆は人の命を一瞬にして消し去る兵器にしかすぎないのだから・・・
映画は生涯を反核運動に費やし、ICANとしてノーベル平和賞を受賞した被爆者サーロー節子さんと同じく被爆二世である竹内道さんに密着したドキュメンタリー。講演で原爆の惨状を海外の方に訴え、多くの外国人に共感を得ている。もちろん、彼女自身が経験した原爆被害のおぞましさがあってこそなのだが、こうやって語り継ぐ者がいなくなることも心配になってくる。
活動をライフワークにしようとカナダ人男性と結婚し、海外へと移住。バージニア州では有色人種の結婚式が認められずにワシントンD.C.で行ったというエピソードも紹介されていた。竹内道さんは父親が日赤病院の院長であり、父が見聞した45年から52年までの日記が見つからず、日本に帰ったときに天皇謁見の絵を探していた。
反核運動の歴史として、ビキニ環礁核実験が行われた1954年には全国でデモが行われた。そして1980年のレーガン大統領時代にもアメリカで反核機運が盛り上がったものの、冷戦終結とともに下火になってしまう。それでもサーロー節子は夫の後押しもあり、ソーシャルワーカーとして働きながら運動を続けていた。
終盤では、2017年国連総会におけるスピーチと核兵器禁止条約採択の様子。世界を動かしたのだ!なぜか涙が止まらない。歓喜の声とともに、生きているうちに核兵器がなくなると予言する彼女の信念が伝わってくる。そして、竹内さんも長崎での被爆者・木村さんの言葉を聞いてハッとする。沈黙を保っていたのは子どもが被爆二世であることで差別を受けるのではないかと危惧していたからという話。今の世の中、なぜか差別やヘイトが大きく取り上げられるように、人間の愚かさが表面化してきている。だから、沈黙することも親の愛情だったのだと、あらためて思い知らされた。
日本が核兵器禁止条約に批准することに反対の意見も多数ある。しかし、「核の抑止力」は「市民を殺すぞ」という脅しに過ぎないという根本的な点で理解しなければならない。抑止力なんてのはヤクザのやり方と同じだよ。
※2021年1月22日核兵器禁止条約が発効した。条約には核保有国や核の傘にある日本などが参加していない。ただし、核兵器がすぐに削減されるわけではない。条約の推進国は、核兵器は違法であるというあらたな国際規範が確立していけば、核保有国の圧力になると期待しています(NHKニュース)。