「エンタメ大噴火」白頭山(ペクトゥサン)大噴火 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
エンタメ大噴火
このタイミングでの鑑賞はタイムリーと言うより、少々複雑な気持ち。
最初聞いた時は、何処?…と正直思ったトンガ大噴火。
近隣諸国は勿論、遠く離れた日本にも被害。
最も深刻なのは言うもでもない、トンガ自国。
今日の最新ニュースによると、火山灰などで国民への被害は84%。もしこれ、日本だったらと思うと…。第6波急速拡大中のコロナの感染者数だってゾッとするというのに…。
衛星が捉えた噴火の瞬間、空高くまで立ち上った噴煙、押し寄せる津波…。
“1000年に一度”とまで言われる本物の火山噴火の映像は衝撃…。
偽善と思われるかもしれないけど、私に出来る事と言ったら、募金箱を見掛けたら少しでも募金する事くらいしか出来ない。
トンガの国自体と国民の長い復興はこれから…。
暗い現実の話はここまでにして、気分を変えて映画の世界へ。
そのトンガから遠く離れた国の火山で大噴火が起きた。
北朝鮮と中国の国境地帯に位置。
朝鮮半島で最も高い山。
過去数回噴火している活火山。
白頭山(ペクトゥサン)。
日本人にとっては聞いた事ない山。でも以上の事から、日本だったら、富士山にあたるだろう。
その白頭山が突如、観測史上最大の噴火が発生。
決して絵空事ではない。富士山だって、いつ大規模噴火を起こすか分からない。
そんな未曾有の大災害に文字通り立ち向かう人々。
しかもその方法が、『アルマゲドン』×『ミッション:インポッシブル』…!?
韓国政府は“変人”と言われる白頭山を研究する地質学者、ボンネに協力を要請。
ボンネは唯一の手段として、白頭山の地下坑道で人工的な爆発を起こし、マグマ溜まりの圧力を下げて更なる噴火を食い止める作戦を提案。
それにはそんじょそこらの爆弾では到底無理。もっと強力な爆弾…。
核ミサイル…!!
しかし韓国は核ミサイルを持たない。ならば、盗むしかない。某国から。
アメリカと北朝鮮の非核化合意により、北の核ミサイルはアメリカに回収される事に。
その核ミサイルの在りかを知る人物として浮上したのが、北朝鮮の工作員、ジュンピョン。現在、スパイ容疑で強制収容所に。
北朝鮮に潜入し、収容所のジュンピョンから核ミサイルの在りかを聞き出す。
聞き出したら、アメリカに回収される前に核ミサイルを奪取する。
勿論大前提は、更なる大噴火が起きる前に。
もうこれ、007やイーサン・ハント並みの難ミッション…!
輸送や爆破など作戦ほとんどを担う実行班と、爆弾を取り扱う技術班。
技術班の隊長に、妊娠中の妻を持ち、除隊寸前であった爆発物処理班のインチャン。
特別チームを編成し、秘密裏に北朝鮮へ、難ミッション開始!
…ところが、この手の作品には必ずのいきなりのトラブル発生!
火山灰により、実行班の輸送機のエンジンが異常を起こし、墜落。
技術班の方は何とかパラシュートで窮地を脱したが…、作戦に中止は無かった。
インチャンが指揮官となり、技術班が全ての作戦を行う。
が、技術班はほとんど実戦経験ナシ…。
この難ミッション、この未曾有の危機、コンプリートなるか…!?
よくよく考えれば、トンデモ設定、ツッコミ所満載。
小惑星を核ミサイルで破壊するならまだしも、核ミサイルで噴火の圧力を下げるって…。
それを爆発させる。つまりは、中国との国境付近で核ミサイルを爆発させる。国家レベルの大問題…!
北朝鮮に潜入して、収容所の工作員から核ミサイルの在りかを聞き出す。これも国家レベルの大問題…!
アメリカが回収する北朝鮮の核ミサイルを、アメリカが回収する前に奪取する。これも国家レベルの大々問題…!
もう幾つ、国境レベルの大犯罪をしているのやら…。
細かな点を指摘すれば、もっともっと。例えば、先のシーンになるが、開かない核ミサイルの信管を開けようと力ずくでブッ叩いたり、核ミサイルを乗せた車でド派手なカーチェイス…。ハリウッドもそうだけど、核は単なるハラハラ見せ場だけの軽い扱い。
リアルでもしもの事態が起きたら取り返しの付かない事に…。非核化がどの口が言う…?
…おっと、脱線しちゃったけど、作品はあくまでTHEエンタメ。
有無をも言わせぬ圧巻の面白さ、迫力、見せ場見せ場の展開、危機危機の連続で、怒涛の如く見せ切ってしまう!
インチャンらの技術班だけだったら、頼りなくて締まりナシ。
そこで強烈存在となってくるのが、ジュンピョン。
不敵で超クセありまくりのジュンピョン。
その威圧感だけで、インチャンらはビビりまくり。
無論易々と核ミサイルの在りかを教える訳がない。
仕方なくインチャンはジュンピョンを牢から出し、協力して貰う事に。
牢から出ればこっちのもん。
隙を見計らって、インチャンが持っていた坑道の地図を盗み、それを食べ(!)、地図は暗記した自分に掛けた“保険”。
行動開始。またまた隙を突き、隊員の一人を気絶させ、脱走。
ジュンピョン無双。インチャンらを翻弄。
一応協力者。でも、元々スパイ容疑が掛けられている、“裏切り者”。
またどこで、すぐいつ、裏切るか…?
脱走した時、何者かと連絡。しかしこの時、深刻な表情。
その後、向かったある場所。
インチャンらには守りたいもの、やらねばやらぬ事があるが、実はジュンピョンにも…。
このインチャンとジュンピョンの敵対。
そこに奇襲する北朝鮮兵。
連携して撃退する。
遂に核ミサイルを手に入れた。
ジュンピョンの思惑も蠢く…。
突然彼らの前に立ち塞がる大国の妨害。攻撃により、仲間が負傷。
核ミサイルを手に入れようとしているのは、韓国だけじゃなかった。
各々の国の目的は違う。
韓国は、国の危機を回避する為。
アメリカは、圧力。
北朝鮮は、言うまでもナシ。
略奪戦の末、隙を突いて運び出したのは、ジュンピョン。
彼は、顔を見た事の無い娘と脱北する引き換えとして、北朝鮮に核ミサイルを渡す。彼も一人の親だった。
ただ一人車に乗せていたインチャンは諦めない。…泣き喚いた時もあったけど。
北朝鮮もアメリカも執拗に追う。
二次噴火、三次噴火、そして最悪の四次噴火が迫る…。
一体何を、どうやったらこの難ミッションと未曾有の危機をクリア出来るんだ…?
噴火モノのディザスター・パニックというより、ド迫力スケールのアクション大作といった感じ。
アクション!アクション!アクション!
手に汗握る見せ場の連続で、テンポよく、中弛みは一切ナシ。
シリアス一本調子ではなく、思っていた以上にユーモアも多い。インチャンと隊員たちとのやり取り、そこにクセ者ジュンピョン。人間臭~い笑い。
ドラマ性も見応えあり。
国家間のサスペンスフルな対立。
韓国に愛想を尽かし、アメリカ国籍となったボンネ。
彼に最初に協力を要請した民政首席のユギョン。理由は、この国に未練があるから。
それを聞いて、ボンネは…。
妻を愛するインチャン。妻と、これから産まれてくる子供の為に。
腹の底が読めなかったジュンピョン。本当の目的は、娘の為に。
当初は敵視し、対立していた二人。
が、危機的状況を乗り越え、知り合う内に…。
ベタで分かっていても、こういう漢二人のドラマはグッとくるものがある。あの最後のシーンなんて、男こそ涙。
また、当初へなちょこだったインチャンがどんどんどんどん逞しくなっていく様なんかもしびれる。
韓国三大スター豪華共演。
ハ・ジョンウがインチャン役で熱演。
イ・ビョンホンがジュンピョン役で巧演。
さて、マ・ドンソクはどんな役で大暴れ?…と思ったら、何と! 地質学者役!
まさかの意外なそっち!? でも、肉体派でもありながら演技派。ドウェインやステイサムが演じるのとは月とすっぽんなくらい、これはこれで絶妙だった。
ちゃんとディザスター・パニック醍醐味もあり。
このCGの迫力やリアリティーは、ハリウッド並みの超クオリティー!
噴火、建物倒壊、地震、津波…驚異的な映像。
嗚呼、またしても韓国映画のレベルは日本映画を越えて…。
監督、スタッフ、VFXスタジオ、キャストもあの『神と共に』に携わった面々。
そりゃあこの面白さ、出来映え、納得。
興奮、迫力、スリル、感動…。ラストシーンのあの温かさ…。
エンタメの全ての要素をたっぷり詰め込み、お腹いっぱい!
私にとってもこの作品は、“キューティープチ”となった!