「70点」竜とそばかすの姫 まぁと@名作探検家さんの映画レビュー(感想・評価)
70点
映画評価:70点
荒削りながら、しっかり伝えたい事が詰まっていた。
これは、素晴らしい作品です。
冴えない少女は、
過去にトラウマをかかえていた。
それは、自分より他人を優先し儚く散った母の姿。
そこから、自分を隠し、偽り、そして押し殺した。
でも、ひょんな事から
自分を隠しながら行動できる空間に足を踏み入れる。
そこは自信がなかったスズにとって、うってつけの場所だった。
隠す必要のないスズは本来の実力を発揮し、
人気者になっていった。
そして、竜と出会う。
この竜との出会いによって、
スズたちは竜探しを始めるのだが、
私にとってはココが一番の疑問点だった。
細田監督が無理矢理、結末に向けて絡ませている様に感じた。この頃のスズでは竜探しなんて到底出来ない。
友人が強引に捜索している事になっているが…、強引で済むなら、今のスズはいない。
そこが私の気に入らない場所。
この部分を不満ながら我慢して見続ける。
すると、竜とベルのコミュニケーションターンに入るが、何故違う痛みをもつ竜に共感できたのか、
ここでも納得いかない点が出てくる。
スズは親に圧力をかけられていた訳ではない。
唯一、一心不乱に応援してくれる存在である母親から見放されたという勘違いから心を閉ざした。
一方竜の方は、その親から存在自体を否定されている。
言うことを聞け、言われた事だけをしろ、何故逆らう。
竜の個性を亡きものにしようとする父親に対し、それでも抗おうとする姿こそが竜だ。
この二人が出会い、劇中の様な展開にはならないと感じた。スズ側が積極的でお節介焼きなら分からなくもない。
細田監督が思い描く作品のために、ねじ曲げられた展開に不満は募るものの、表現したい気持ちは理解できるので、好評価は出来ます。
そして、問題視されるラストシーン。
これも、今まで通り細田監督のエゴです。
ですが、必要なシーンです。
スズが殻から出て羽ばたく為に、
スズに勇気を与え、そしてかつて母が行った善行に気がつかせるシーンだから。
別にスズを否定し(見捨て)て、母が他人を助けようとしたのではなく、目の前に救いたい存在があったから勝手に身体が動いた。そこへの理解です。
そして、スズは少しずつ前向きになっていく。
こういう暖かいストーリーです。
もう1つの世界は逃げるために用意されたのではなく、本当の自分に気付かせる場所なんだよ、と。
だからSNSで他人に迷惑をかけ、暴言を吐く人間は、現実でどれだけ善行していても、そいつの本来の姿はクソ野郎だよ、と。
だから、Uの世界では勝手に本来の姿をアバター化させている。荒削りだったけど、どう考えても素晴らしい作品でした。
【2025.12.3観賞】
