「歌が魅力。」竜とそばかすの姫 コバさんの映画レビュー(感想・評価)
歌が魅力。
歌うことが自己表現と捉えると、その歌声が本当に魅力的だったことが本作の肝だと思います。
以下は自分なりの解釈です。
鈴は幼い頃に母親を亡くしています。母親が見ず知らずの子を助けるために死んでしまったことで、鈴は母親に自分を選んで貰えなかったと感じ、自分の存在価値を見出せず、自分に自信を持てない子になってしまう。
そんな鈴にとって、可愛くてみんなに人気なルカや、理解者が少なくても我が道をいくカミシンは憧れの存在。
ベルとなり歌えるようなった鈴の前に、嫌われものの竜が現れます。鈴が最初から竜に興味を持った理由は背中のアザ(傷)。同じく傷を抱える者として気になったということでしょう。鈴が飼っている犬の足が一本ないのも、鈴がそういった存在にシンパシーを感じる性格だということの暗喩なのでしょう。さらに、竜の正体である少年にも母親(城にあった写真の女性)がいない。恐らく竜の母親は本当に竜を捨てたのでしょう。同じ傷を持った二人が惹かれあっていくというお話。
終盤、鈴は竜を救う為にネット上で正体を晒す。そこで母親が川に飛び込む場面がフラッシュバックする。見ず知らずの子供を助ける為に自らを犠牲にすることで、初めて母親と同じ立場となり、自分が母親から捨てられた訳ではないと自覚する。=自分に自信を持って行動出来るようになる!といったところでしょうか。
夜行バスの中で父親と連絡をとるシーン。父親の「お母さんに育てられて優しい子になった」という言葉。これは、死んだ人間も今の自分を作っているという、未来のミライでも語られたテーマです。細田監督の思想なのでしょう。実際、鈴は母のコーラス仲間、幼馴染、友人のヒロちゃんというように、死んだ母親の意思を継いだかのような存在に囲まれて育っています。
ラスト、空を見上げての「ありがとう」は紛れもなく母親に向けての言葉。物語中盤では大きな雲に隠れていた太陽=母親が顔を出して終わる。
所々、ご都合過ぎやしないか?と首を傾げる場面もありましたが、僕はこの映画、好き派です。
とにかく歌が良い。これが無ければ−0.5点でした。
今後も細田監督の活躍に期待しています。