「ただただ合わない思考に倫理観。オマージュの定義とは」竜とそばかすの姫 inさんの映画レビュー(感想・評価)
ただただ合わない思考に倫理観。オマージュの定義とは
今回内容については酷評です。酷評というか、あまりに"自分と合わない"といった個人点では星1.5、ただ一般目線で見ると、素晴らしい映像と曲、スタッフの頑張りでエンタメとして星3以上はつけざるを得ないかなと。中村佳穂さんの歌声、圧巻でした。素晴らしいです!
以下は個人の感想です。
まず大枠ですが、なんでここ最近の作品、どれも1番のビジュアル的盛り上げどころを上映時間の7割くらいのとこに持ってきて、そのまま尻すぼみで終わらせちゃうんでしょうね。盛り上がりー!>ちょっとホロリEP>スタッフロール!でいいと思うのですが。
その点、新海監督なんかは恥ずかしげもなく青春真っ盛りに終盤に向かって盛り上げてくれて、多少の内容なんか目を瞑れるほど作品に浸らせてくれます。大人感……?謎です。
問題の脚本。細田監督の作品は全て視聴済みですが、今作はとにかくキャラの思考や倫理観で現実と剥離があって、全くノリ切れません。
ファンタジーならファンタジーで良いのです。ディズニーなんかまともに考えたら正直サイコキャラばかりですしね。でも私は大好きですし、バケモノの子も好きです。
あれらはちゃんと「ここはそういう世界である」と認識させてくれるのですが、未来のミライと特に今作、話の根幹があまりに"現実"に寄せてくるため、私たちの世界の思考で見ざるをえません。その上でのあまりのモヤモヤ感……
・結局VRも見た目と才能なの…?竜は醜いの?そもそもバケモノアバターいっぱいいるし
・24時間テレビのような取ってつけた障害犬
・自治厨は普通は真っ先に炎上する
・何なんですか?その唐突なチートアイテム
・校内SNSのあまりの現実離れ
・ヒロインがあなたは誰?あなたは誰?って、そもそもそれをバラしたくない!っていうのがこの話の根幹なはずなのに…
・というかSNSで誰?誰?!とか来る知らん人は即ブロしか選択肢がない
・DV父親動画とか真っ先に炎上すべき案件。50億SNSとは
・周りが正体知ってる描写、伏線も無ければその意味もない。え、もしかして声一緒…?もう一人の自分とは…
・視聴者のミスリードのためだけの幼なじみ。行くだけでほんとに何もしないおばさま's
・暴力大人に女の子一人で行かせる上にアシストも一切無しの周り
・腰抜かす父親。。大好き……???
毎分首捻る箇所、話のためだけのキャラだらけで、あまりに多すぎて書き切れませんが、ファンタジーならファンタジーに浸らせて欲しいのです。社会派ならしっかり下調べや心情を練って、社会派をして欲しいのです。。かなしい。
そしてこれは個人的に私が好きすぎるため一番ですが、美女と野獣オマージュ、これは…アリなんでしょうか…?
古今あらゆる作品で、名作のオマージュはあります。キャラ、相関、構図、モチーフ、セリフ、展開etc。そんなことは承知で、パクリだとかそういうことを言うつもりは毛頭ありません。
ただ、これを全てやってしまうのはさすがにチキンレースを振り切っています。しかも"BELLE"の名前を使って。
それも必要な要素であったなら私も何も言いません。
本当にディズニーから連れてきたキャラデザ、ベルの名前、ベルのローブ、エントランス、小さい使用人たち、窓際の部屋、唐突なタキシードに舞踏会、信じてもらえないベル、ガストン、閉じ込められるベル、救助、乗せられてしまう暴徒達、燃える城、そして、バラ。
はたして、この中に脚本に必須な要素何個ありましたか…?触れられたくないはずのバラ、意味ありましたか…
その上で、なんとこの映画のビジュアル的見せ場の半分近くが、ただただモチーフを流用しただけのカットなんですよ。
正直、正気か?と笑ってしまったくらいなんですがどうなんでしょうか。ただただ「利用している」としか感じられませんでした。憤慨というか、あーあーあー……って感じですが。
それをやってもオリジナル部分に説得力があればまだ良かったのですが、上記の通りふわっふわなもので、パクリとかでなく、ただただ「あぁ、美女と野獣のアレンジしたかっただけなんだな」と。これは二次創作ですね。二次創作に原作のスタッフ連れてくるのはどうなんでしょう。
とにかくオマージュ要素に意識が行きすぎて、周りが全然頭に入ってきません。
そもそも美女と野獣って「内面で惹かれ合う恋愛」が主題で必須なわけですが、今作って「共依存や他人への興味から始まる自身の救い」なんですよね。
おいおい、そんだけ使っといてそこ外すんか、と。じゃあもう全オマージュ要素いらんくない?と。実際不要だった……。
さんざ酷評していますが、この作品に星4以上をつけられている方もいて、そういう人もいるだろうなと私でも思える程には部分部分で素晴らしい点も認識しています。
ただなんというか、内容、制作、全ての点で今作は私と倫理観が合いませんでした。
細田監督、一体どうしてしまったのか……。脚本も絶対であるなら、せめてファンタジーをやって欲しいという気持ちでいっぱいです。
※オマージュ部分すごかった!って意見も見かけます。この点に関してそういう方への「そんなレベルじゃ無いでしょお!」的な批判はあまりなく、あぁ、価値観倫理観のが自分とは別軸だったんだな。って感じです。