劇場公開日 2021年7月16日

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「良かったけど、美女と野獣はやらなくていい」竜とそばかすの姫 さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5良かったけど、美女と野獣はやらなくていい

2021年7月19日
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美女と野獣+レディ・プレイヤー1+エイス・グレードというのは本当だわ!(笑)

細田守の最新作。
今作では近年で描かれていた親子の主題はサイドに残しつつ、サマー・ウォーズで描かれたネット社会や顔の知らない相手との繋がりといったテーマが主題となっているので、その意味では今までの細田守作品の集大成とも呼べるかもしれません(事実、時をかける少女の名シーンを思わせる演出もあったり)。

まず、冒頭から圧巻です!
「U」という仮想空間のワールドをロングカットで魅せていき、サマー・ウォーズ以上の細かで綺麗なCG映像でさながらUの都市をジェットコースターに乗って見渡しているかのような感覚に陥りました!

そして、劇中でベルがクジラに乗って出て来て歌う場面が現れて、ベルを演じたキャストの個性的で素晴らしい歌声に聞き惚れ、King gnu常田大希率いるmillennium paradeの楽曲も独特で幻想的な世界観に非常に合っていました。
あの冒頭だけでベルという存在がいかに「U」でカリスマとなっているか理解出来る場面で、本当に素晴らしかったです。

作画も相変わらず素晴らしいです。
細田守らしく現実パートの作画が写実的で美しいので、どの場面においても映像に酔いしれていました。

また、竜の正体について探すという展開がほぼメインの物語として進行していき、その正体に関してもよくある在り来たりな展開ではなく、良い意味で意表を突かれるものになっていて驚きと感動がありました。
(*^ー゚)b グッジョブ!!

そして、今作ではネット世界をサマー・ウォーズ以来に描いていましたが、サマー・ウォーズは2007年の作品で驚きが多かったのですが、今作ではYoutubeやアバターを使って匿名で歌を歌うという、最近だと「うっせえわ」のAdoのようなキャラクターの視点で展開されていき、そこに「竜」という謎のキャラクターとの交流が描かれるのですが、前作の「未来のミライ」とは違って最後までストーリーが納得のいく方向に進んでくれますし、なおかつ「竜とそばかすの姫」というタイトルにもちゃんとマッチしていました。

そして、この映画においても「親子」の物語が描かれますが、本作では親子が主題になってるはずの「バケモノの子」や「未来のミライ」よりも全然心動かされました。
主人公の鈴は川の事故で母を亡くした経験を持っており、この子はどことなく母を受け入れられない姿を感じました。
しかし、そんな主人公が終盤に起こした行動がそんな母親の行動と重なるため、母親を受け入れたように感じ、そこに感動しました。

さて、ここまで語った好きな所は殆どが満点クラスです!
なので、そこだけ見れば本作は今年ベスト級なのですが、残念ながらこの映画には自分が看過できない点が何個かあります。

まずは主人公の鈴を演じた中村佳穂さんの演技。
前述通り、歌は素晴らしいのですが、声優としての演技は正直結構酷かったです。
勿論、本職は歌手の方ですし声優は初挑戦というのは承知の上ですが、細田さんはもう少し彼女に演技指導をさせてあげてほしかったです。

あと、竜が"自称"治安警察部隊に追われてる理由について。
「U」を脅かす存在として追われてる理由が全く解りません。
例えば竜が薬物等の違法物品の販売に関わってるというのならまだしも、劇中の犯罪で相当するのは自分を襲ってた"自称"治安警察を何人かオミットさせてたくらいです。
でも正直それくらいの犯罪なら少なからずやってる人いるんじゃ...?

また、観る前から話題になっていた美女と野獣のパロディ。
正直あそこまで露骨にやるとは思わなかったです。
主人公の名前のアバターは同じ「ベル」だし、竜とベルの一連の交流やアジトの内装においても殆どが似ていました。
でもあんな安易で露骨な既存作品のパロディなんて細田さんにやってほしくなかったなぁ...
正直、あんなに露骨にやってしまうとかえって世界観のオリジナリティが損なわれるのでだいぶ幻滅してしまいました。

他にも色々と突っ込みどころはありますが、名前の知らない相手との繋がりや親子の話としては面白く、そこに細田守的な美しいアニメーション演出と素晴らしい楽曲で充分カバーされていました。

正直好みは分かれると思いますが、個人的には「賛」です。
ただ、「絶賛」ではありません。

さうすぽー。