「非現実的な救いの向こう側」竜とそばかすの姫 tofuさんの映画レビュー(感想・評価)
非現実的な救いの向こう側
細田守監督とは趣味が合わない、というのはすでに過去作から分かっていました。でも期待して見に行ってしまった。後悔。
虐待的なトラウマがある人は見ない方がいい。
映像は美しく、高校生の恋模様シーンは良かった。
美女と野獣のオマージュがとてつもなくて、そこまでオマージュしなくても良いのではと感じたし正直なところ蛇足に思えた。ベルと竜の心の交流を描くにしても伝わらないのでは?ベルは好奇心から竜の正体を調べ始めるけど、行動に説得力がなく(恋愛感情でもないので衝動がどこから来るのかわからない)またダンスシーンはいきなりすぎてテンポが悪かった。ベルが竜に憧れる要素が少なく、それが同情や寂しさからの親近感という雰囲気も少ないので。
描きたいものは、家族愛=歪んだ支配も含むものと外界とのつながり、という事だとしたらあまりにも非現実的な児童虐待救済アニメという印象。
アニメだからという言い分もあるかもしれないけれどあまりにも現実離れしているというか。
たぶん四国から東京まで向かううち子供たちは暴力で大変なことになっていると思ったし、東京までたどり着いてから子供を恫喝するような成人男性は、女子高生を殴るくらいの暴力性を持ち合わせていると思う。そこに仮に世間体(他人を叱らない父親)があったとして、雨の日に外まで子供2人を探しにきて殴ろう、支配しようという人間なのだから、あそこで情けなく怯むわけがない。
細田守監督は成人男性が他者を恫喝する声を聞いた事がないんだろうな、と感じた。そこに立ち向かう鈴ちゃんはカッコいいけれど、大人ですらどうにもできないことを女子高生に立ち向かわせることは美談ではない。
児童虐待をテーマにしたかったのはいいけれど、何の救いやこちらへの問いかけにもなっておらず、正直なところもっと練るべきだったのでは?という気持ちになってしまった。
良かったのは、映像の美しさやUの中の世界観の美しさ。ベルの歌声やキャラクターも面白かった。人間の醜さ、好き勝手言っている正直な匿名の誰かという表現。
こうして匿名で感想メモしてる自分が言っても説得力ないと分かってはいますが、でも98%期待してなかったけど2%は期待してたので脚本のまとめ方もう少しどうにかできなかったのかな、と思ってしまう。せめてテンポが良ければ。
ファンタジーにしたいのか現実にしたいのか。どっちだったんだろう。