「救われた空間から現実の救済劇へ」竜とそばかすの姫 室木雄太さんの映画レビュー(感想・評価)
救われた空間から現実の救済劇へ
弱々しかった背中に前向きさを宿らせる手腕は、いつもながら秀逸だ。秒単位で歓喜と呪詛が入り乱れる仮想空間、素顔も本名も明かさないネット社会こそ、現代人の終の住処なのかもしれない。そうしたフィールドを舞台としながら、山間のホッとする故郷たる景観での生活が交互に描かれる。能力の表現を、自己解放を体現できた世界から、現実の救済が示す意味は強い。我々、バーチャル慣れしてしまった若中年層が温もりを守る行動は、この瞬間も求められていることだろう。歌声には、そんな勇気が響いていた。
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