劇場公開日 2021年7月16日

  • 予告編を見る

「おもしろそうな雰囲気が漂うミュージックビデオ」竜とそばかすの姫 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0おもしろそうな雰囲気が漂うミュージックビデオ

2021年7月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

幸せ

久しぶりの細田守監督作品ということで、期待と不安が半々での鑑賞。前作の「未来のミライ」はかなり残念な出来ばえではありましたが、それよりは本作のほうがおもしろかったです。

ストーリーは、幼い頃に母を亡くして以来、何事にも自信を失い、父ともぎくしゃくしていたスズが、仮想空間「U」の中で出会った竜との触れ合いや、現実世界の友達との交流を通して、力強く一歩を踏み出すというもの。主人公スズの成長物語をメインに、友情、恋愛、親子愛を絡め、仮想空間の可能性、虐待などの社会問題も描いています。

最も印象的だったのは、映像と音楽。各キャラは、やわらかくて豊かな表情の変化やコミカルな動きで、本当にいきいきと描かれています。舞台となる高知の自然も美しく叙情的に描かれ、日本の原風景を見るようでノスタルジックな気分に浸れます。そして圧巻だったのは、ベルの登場シーンやクライマックスシーン。本作では歌が大きな意味を持つのですが、中村佳穂さんの歌声と仮想空間の映像との融合はすばらしかったです。通常スクリーンで鑑賞したのですが、このシーンだけはIMAXで観たかったです。

と、ここまでは良い点を挙げてきましたが、不満点もそれなりにあります。まずは、ストーリー。現実の閉塞感から仮想空間で自分を開放するところまではいいのですが、そこから竜の正体にこだわっていく展開が、イマイチ腑に落ちませんでした。さらに言えば、竜の背景にあるヘビーな問題も、あえてスズに解決させる必要があったのでしょうか。ていうか、解決してなくないですか? あと、父との関係修復はできたっぽいですが、それ以前にその経緯の描写が不足していて、感動に至りませんでした。シノブくんとの関係も友達の恋愛も、描き方が中途半端な感じがして、スズの変容に大きく絡んできたようには見えませんでした。

また、各キャラの変容がいささか急すぎたり、行動に一貫性がなかったりして、違和感を覚える部分が少なくなかったです。例えば、ベルと竜との急接近、竜の正体へのこだわり、一人で遠距離移動するスズを見送るだけの周辺人物、スズに対峙した途端にひるむ虐待男など。ラストは、「他人のために命を落とした母を理解できなかったスズが、名前も知らない竜のためになりふり構わず行動するようになった」という対比を描きたかったのでしょう。そのねらいは理解しますが、それでもスズの行動は理解できません。見ている者に納得させるだけの描写がなかったのが残念です。

他にも、竜の住所の特定、無策で訪れた後の奇跡的な路上での出会い、逆にあれこれ特定されたであろうスズのその後の生活など、気になることか多かったです。あれこれと内容を盛り込みすぎて、ストーリーの中で消化しきれなかったような印象を受けました。結果として、おもしろそうな雰囲気が漂うミュージックビデオといった感じの作品になってしまったのは、なんとももったいない話です。

おじゃる
川野義和さんのコメント
2021年10月18日

そうなんですよね。ベルだけでもえらい騒ぎになってたのに、素顔さらしたら女子高生で、みんな一緒にラーラーやってみんなの心をガッチリ掴んだ(であろう)鈴が、あの後平穏に暮らせるとは思えないんですよね。

川野義和
レモンブルーさんのコメント
2021年7月18日

おじゃるさん 共感をありがとうございます!おじゃるさんの不満点 仰る通りです!全く疑問しかなかったですよね。いっその事 鈴のストーリー部分と美女と野獣のシーンなどをカットして壮大なる荘厳などMVに作り変えた方が良さそうですね(笑)

レモンブルー
満塁本塁打さんのコメント
2021年7月18日

返信お気遣いありがとうございます😭😭😭。😊

満塁本塁打
満塁本塁打さんのコメント
2021年7月18日

確かに。田舎のウブな女子高生が、手ぶらで、一人で、土地勘無く、正確な住所もわからないで、高知から首都圏へって、せめてボストンバッグぐらいの荷物持てよ。どうせ一泊になるのだから?とツッコミ入れたくなりました。独り言です。すいません。

満塁本塁打