「感性の作品、心で受け止める作品、カンヌが大好き作品」竜とそばかすの姫 なべたさんの映画レビュー(感想・評価)
感性の作品、心で受け止める作品、カンヌが大好き作品
細田守監督のサマーウォーズとバケモノの子は僕にとって凄く人生を豊かにさせてくれた作品でした。
今回の作品もとても期待していましたが、ストーリーがしっかり組んであるというよりも、感性に訴える作品であると思います。ツッコミどころはたくさんありました。
まずストーリーですが少し飛び飛びに思えました。主人公すずことUの世界のベルは竜に対してとても親近感を覚えて、背中の傷はなんなのか、嫌われる理由はなんなのか、彼が誰なのか、そして助けてあげたい気持ちになっていきますが、そこの理由が足りないのかなって感じました。
すずが6歳で母親がなくなってしまい、父との距離感も掴めない中で自分が過去の傷を負っていて向き合ってないのに、そこまで竜を救いたい気持ちになるのかなって思います。親近感が湧いたとしても、救いたいまでの余裕はないはずだと思ってしまいました。また竜の心を開きたいと思うベルは少し強引で、時間をかけて見守ることを知らないのも残念だなって思いました。
親の虐待を受けている子どもを助けに行くといって一人で行ってしまうところ、何故か虐待の子供を助けるときにその親から殴られないところ、虐待家族のことの顛末を描かないところはご都合主義かーって思いました。それならサマーウォーズのようなミサイルが近くに落ちてプログラムで回避する方がスッキリする。描ききれなかった感じなのか、感性で終わらせるのか知りませんがちょっと疑問。
それにバラのシーンや、竜(もうビーストと呼ぶべきか)と踊るシーン、ベルの名前などが美女と野獣のパロディでしかない。オリジナリティが欠けている感じはあります。
その上でも3DCGでここまで違和感なく背景と同化させ新時代の技術を取り入れていこうとするところ、新海誠監督の絵と音楽はメジャー性を狙っているところを真似せず自分自身の世界観を表現しようとしているところは流石だなと思いました。売れる作品を作りたいと思ってないのが素晴らしい。
また歌のシーンは圧巻でこんなにも綺麗に音は撮れるんだ、歌は歌えるんだと思い涙が出そうになります。
ストーリーよりも歌や表現で心に訴える。
ベルが歌うと皆んなの心が光照らされるように、理屈ではない感じがしました。
この作品は描ききらない。感性で留めたのかなって思います。そう思わないとストーリーに批判してしまう。