劇場公開日 2021年6月18日

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「生き方の迷いに優しく鍼を刺す作品、松本壮史監督の当たりは続く…」青葉家のテーブル たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5生き方の迷いに優しく鍼を刺す作品、松本壮史監督の当たりは続く…

2021年6月30日
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鑑賞方法:映画館

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今年は沢山の邦画が良作なのだが、こんな作品が埋もれているなんてホント勿体ない。上半期のラストに相応しい、思い出し笑いして温まるような優しい傑作。
去年、東京国際映画祭で『サマーフィルムにのって』を観て、松本壮史監督の作品を待ち遠しく思っていた。そんな中で先に公開された作品。優しくてぬくぬくして自信を貰えた。

もともとはECサイトのドラマ。それは観ていないが、監督もツイッターで言っていたように、新たに描き下ろした一本なので、全然問題ない。こんな生活をしているんだ、くらいでOK。
主演は西田尚美と市川実和子なんだけど、ストーリーテラーは栗林愛希。やりたいことに自信を持てなくなってきた女子高生。多感なときに迷い込むのが、ぼちぼち就活が始まろうとしている自分に少し重なった。そんな彼女の迷いにやさしい鍼を打つように助言する春子に心が軽くなる。そんな春子も絶縁していた知世に会いに行く。
北欧、暮らしの家具店による映画ということあって、インテリアもシンプリーで可愛い。エメラルドの壁がビビッドで、傍から見たら成功している知世の凄みを知らしめるようにすら見える。そんな彼女と、少しの劣等感を持って接する春子も可愛い。なんか、いい歳の取り方をしているように思う。
一見すると大人向けにも感じるのだが、少ししゃがんで子どもたちの視点も並行して描かれるので、どの年代、どの生き方も否定しない雰囲気が堪らなく心地よい。綺麗事で片付けるわけでもなく、逃げるわけでもない。赴くままに向き合っていけばいいのだ。

これから自分がもしも型にはまろうとしているなら、この映画を観て荷物を降ろしてあげたい。そんな、生き方のエッセンスが詰まったやさしい傑作。

たいよーさん。