「デスマッチプロレスという世界」狂猿 かぐやぷりん。さんの映画レビュー(感想・評価)
デスマッチプロレスという世界
デスマッチプロレス界で"カリスマ"と称される葛西純を1年間に渡って追いかけたドキュメンタリー。
私自身"デスマッチプロレス"という競技を殆ど知らず、どのような世界の話なのか知りたくて好奇心から鑑賞。
感想としては、想像以上にハードな作品だった。
肉体と肉体がぶつかり合い、相手をダウンさせるプロレスとは違い、肉体はもちろんのこと、武器(凶器)を使って相手を攻撃しても良いという特殊ルールにて行われるのがデスマッチだ。そのデスマッチ界でカリスマと呼ばれる葛西純。鋼のような強靭な肉体、黒目と真逆のカラコンに殺気立った眼差し。そして傷だらけの身体と、歴戦の激闘を刻んできたその背中は完全に初心者な私でも何か感じるものがあった。一度リングを降りればデスマッチに対するモチベーション、家族のこと、子供のことと、1人の選手、1人の父親としての側面も伺える。
2019年の夏頃からの怪我による長期欠場から、デスマッチプロレスと向き合う様子は"葛西純"という一人の人間をありのまま映し出しており、ドキュメンタリー作品ならではといった部分があり良かった。所々で葛西選手のデビュー当時の試合の映像や、復帰後の試合などが映されるが、今のTVでは到底許容できない描写が多い。だからこそ、この作品には観る価値が生まれるのではないだろうか。
ただ、どうしても腑に落ちなかったのは、葛西純がデスマッチプロレス界にてどのような意味で"カリスマ"と称されているのかだ。他のレスラーは"芸術点が高い""個性の塊"と表現していたが、どのような点でそう言われるのかを掘り下げて欲しかった。恐らくファンの方々から言えばもはや当たり前なのかもしれないが、私のような初心者にはいまいち伝わらなかった。
しかし、デスマッチプロレスラーという職業に対して全く知識の無い人間がドキュメンタリー作品として追って鑑賞しても十分に噛みごたえのある本作。毎試合の如く流血し、傷だらけになるのは言わずもがなで、まさに狂気の沙汰だ。だが、そこにはデスマッチが好きで、愛を持って自分のため、観客のために必死になる姿がそこにはあり、どこか応援せずにはいられない。
今回、"どのような世界なのだろうか"という興味からの本作の鑑賞ではあったが、これまで知らなかった"デスマッチプロレス"という世界を少しながら知ることが出来たのもこの『狂猿』という作品のおかげだ。一つ人生の経験値、いや、普段よりも刺激が欲しい時に鑑賞してみるのはいかがだろうか。